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【主張】コロナ差別 いまだ深刻、許してはならぬ
新型コロナウイルスに関連した差別や偏見が今も続いている。あってはならないことだ。
医療従事者らに対する風評被害について、日本医師会が昨年10月から約3カ月間にわたり行った調査の結果が発表された。
全国から698件に上る被害報告があり、この中には医療従事者らの家族も含まれている。
具体的な内容を見ると、医療従事者は「保育園などの利用を拒まれた」「美容院の予約を受け付けてもらえなかった」などの不当な扱いを受け、家族は「学校や職場で暴言を受けた」「保育所や学校内で子どもが隔離された」といった被害に遭っている。
コロナ治療の最前線で奮闘を続ける医療従事者に加え、その家族もつらい思いをしている現状は看過できない。日本医師会が「由々しき事態」と憂慮するほど深刻だ。
医療従事者以外でも、クラスター(感染者集団)が発生した学校が標的となり、インターネット上などで非難され、生徒や保護者まで誹謗中傷されるケースが報道されている。
感染者への差別も後を絶たず、感染したことを理由とした解雇や、回復したにもかかわらず職場復帰を認められないとの相談が行政機関などに寄せられているという。
こうしたことから、感染者が差別や偏見を恐れ、感染拡大の防止に必要な行動履歴や濃厚接触者の情報提供を拒んだり、感染の疑いがあっても医療機関での受診を控えるような事態となる懸念も出てくる。
コロナ禍の長期化による不安やストレス、感染症に関する誤解が、差別や偏見の背景にあると指摘される。だからといって、誹謗中傷や不当な扱いは断じて許されない。
今国会で改正され13日に施行された新型コロナ対策の特別措置法には、感染者やその家族、医療従事者らへの差別を防ぐため、国や自治体が被害者の実態把握や相談支援、住民への啓発活動などを行うことが盛り込まれた。
改正法の施行を、差別や偏見を許さず、さらに他者を思いやることが大切であるとの機運を、社会全体で醸成する契機としなければならない。