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コラム「北斗七星」
“春告魚”は地域でそれぞれだが、広辞苑には「ニシンの異称」とある。今年も北海道小樽市の沿岸などで、ニシンの「群来」を確認。大群が押し寄せ、産卵と放精によって海面を乳白色に染めた◆明治期以降、道内各地に“御殿”が建つほどの隆盛をもたらしたニシン漁。ピーク時の水揚げは年間約100万トンに達した。ここ数年の漁獲量は右肩上がりで、地物が店頭に並ぶようになったとはいえ1万トン程度である◆1990年代にパッタリと姿を消したマイワシが近年、道東地方を中心に水揚げを伸ばし、以前は見なかったブリが取れるように。一方、サンマやイカ、秋サケなどの代表的な魚は、記録的な不漁が続く。北の海に何かが起こっている◆その要因として地球温暖化による海水温の上昇や、数十年周期で海洋環境が変化することによって起こる「魚種交代」などが指摘されている。サンマでいえば、中国や台湾などによる北太平洋上での乱獲が叫ばれ、一昨年には日本を含む8カ国・地域間で漁獲上限を決めた。国内では昨年末、科学的知見に基づく適切な資源管理を柱とした改正漁業法も施行された◆ユネスコ無形文化遺産に登録される「和食」も、豊かな海の幸がなければ魅力は半減だろう。持続可能な“食”のあり方を、あらためて見つめ直したい。(武)