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【主張】嫡出推定の見直し 「無戸籍者」生まない法改正を
出生届が出されていない「無戸籍者」の問題解決へ道筋が示された。必要な法改正につなげたい。
離婚後300日以内に生まれた子どもを前の夫の子とみなす民法の「嫡出推定」の規定について、法制審議会(法相の諮問機関)の専門部会が、見直しに向けた中間試案を取りまとめた。
中間試案によると、離婚してから300日以内に生まれた子を「前夫の子」とする規定は維持しつつ、出産時に再婚していれば「現夫の子」とする規定を新設する。離婚時に妊娠している女性に課されている、100日間の再婚禁止期間の規定も撤廃する。
法制審は今後、意見公募を経て議論を進め、最終案をまとめる。法務省は来年の通常国会に改正法案を提出する方針だ。
嫡出推定は、無戸籍者を生む大きな要因と指摘されている。法務省によると、今年1月時点の無戸籍者は901人。このうち73%は、DV(配偶者などからの暴力)などを理由に、前夫が父親とみなされるのを避けようと母親が出生届を出さなかった。
無戸籍になってしまうと、住民票の作成や銀行口座の開設などが難しく、進学や就職、結婚でも大きな不利益を被り、社会的にも孤立しやすい。基本的人権に関わる深刻な問題であり、嫡出推定は見直すべきである。
中間試案では「嫡出否認」の権利拡大も盛り込んだ。
嫡出推定を覆すための手続きとして、嫡出否認の訴えを起こすことができるが、その権利は現行法では夫(前夫)にしか認められていない。DVなどから逃れた女性が前夫に裁判手続きを求めるのは困難だ。このため中間試案が、子どもや母親にも訴えの権利を認めるとしたのは妥当である。
嫡出推定の見直しや嫡出否認の権利拡大は、公明党が主張してきたものだ。今回の試案について竹内譲政務調査会長は「無戸籍問題の解決に向けて大きな前進」と評価している。
無戸籍者の実態は把握が難しい面があり、支援する民間団体は、実際には1万人以上に上ると指摘している。政府は改正法案づくりをしっかりと進めてほしい。