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【主張】がん患者の不妊対策 受精卵など凍結保存に助成実現
子どもを持つことを望む、若い世代のがん患者にとって朗報だ。
厚生労働省は、43歳未満の男女を対象に、がん治療の影響で生殖機能が低下・喪失する前に卵子や精子などを採取・凍結保存する「妊孕性温存療法」への助成制度を4月から始める。
1回の温存療法につき、体外受精や顕微授精の受精卵で35万円、卵子で20万円、卵巣組織で40万円、精子で2万5000円(精巣内からの採取は35万円)を上限とし、1人2回まで助成する。
がん患者に行われる抗がん剤の投与や放射線治療などは、不妊につながる場合がある。このため治療をためらうケースもあるという。
日本産科婦人科学会などによれば、がんの治療後に子どもを持てなくなる可能性のある患者は、推計で年間7000人に上る。がんを患った上に、子どもも諦めざるを得ないことは、大変な精神的苦痛であるに違いない。
こうした中、患者にとって希望の光となるのが温存療法である。
ただ、温存療法は公的医療保険の対象外で全額自己負担となる。全国骨髄バンク推進連絡協議会によれば、卵子の採取・凍結には15万~45万円、精子は2万~7万円程度かかるとされる。がんの治療費に温存療法の費用が加わるため、患者の経済的な負担は重くなる。
温存療法に対して独自に助成する自治体もあるが、助成額などにバラツキがある。国の制度とすることで地域差を解消し、より多くの患者の負担を軽減する意義は大きい。
大切なのは、医師による患者への丁寧な情報提供だ。
がんの治療に入る前に、温存療法を希望するかどうか、しっかりと確認する必要がある。また、がんを宣告した直後は患者の動揺が激しい。温存療法の説明をするタイミングについても十分に配慮してほしい。
公明党は、卵子や精子の保存支援に関して2018年7月に提言するなど、政府に積極的に働き掛けてきた。同時に、公明地方議員の後押しで助成を実施する自治体が増えてきたことが、国の制度化につながった点も強調しておきたい。