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【主張】2021年春闘 非正規労働者の処遇も課題だ
コロナ禍による働き手の不安に寄り添った話し合いを期待したい。
賃上げや職場環境の改善などをテーマに、各企業の労働組合と経営者側が交渉する春季闘争(春闘)がスタートした。
昨年までの春闘では、景気回復や人手不足を背景にして、大手企業を中心に7年連続で2%を超える賃上げにつながった。
しかし、コロナ禍が続く中での今年の春闘は様相が異なる。
先月27日に行われた日本労働組合総連合会(連合)と日本経済団体連合会(経団連)とのトップ会談では、基本給を底上げするベースアップの必要性などを訴えた連合側に対し、経団連側は慎重な姿勢を示した。
予想されたとはいえ、賃上げを巡る両者の溝は深く、今後の労使交渉は難しいものとなりそうだ。
また、業種によって交渉テーマに一段と大きな違いが出るともみられている。
コロナ禍で人の移動が激減したことは、交通や宿泊、飲食、娯楽などの業界に深刻な打撃を及ぼしている。一方、ネット通販をはじめ巣ごもり需要の高まりで業績が上向いている業種もある。
このため今年の春闘では、事業の継続と雇用の維持が優先課題となる企業もあれば、業績に応じた賃上げが焦点となるケースもあろう。
いずれにせよ、コロナ後には景気の回復が見込まれている。まずは、働き手の生活を守ることが日本経済の再生に不可欠であるとの認識が重要ではないか。
この点で、目を向けてほしいのが非正規労働者の処遇改善である。
野村総合研究所の試算によると、コロナ禍の影響でパートやアルバイトでの仕事が5割以上減っている上に、休業手当も受け取っていない女性の失業者は約90万人に及ぶ。中には自分が支給対象であることを知らないケースも多いという。看過できない実態である。
不安定な立場にある非正規の働き手をどう守るのか。コロナ禍によって改めて浮き彫りになったこの課題も、今春闘の交渉テーマの一つにしてほしい。