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消費税10%まで1年 識者に聞く
福祉・教育の財源に裏付け
納税事務 国のサポート重要
日本社会事業大学学長 神野直彦氏
――首相が来年10月に予定通り消費税率を引き上げると表明した。
神野直彦・日本社会事業大学学長 政府の明確な方針が示されたことで、遅れていた事業者や自治体などの準備が加速されるだろう。税収の増加分は、福祉施策や、幼児教育無償化など教育分野に充てられることが既に決まっている。国民生活を支えるサービスの財源が裏付けられ、予定通り実施すると明確にしたことを高く評価している。
――軽減税率が導入されることの評価は。
神野 消費税は、所得の少ない人ほど負担感が重いという「逆進性」があり、また、税金そのものに対する拒絶的反応である「租税抵抗」も強い。酒類や外食を除く飲食料品などの生活必需品について税率を据え置くという軽減税率は、公明党が政党で唯一提案したもので、国民の理解を得るには大変重要だった。
――税率引き上げの影響緩和策について。
神野 前回2014年の税率引き上げ時は家計の負担増額が約8兆円とされたが、今回は約4分の1の2.2兆円程度と試算されている。
また、前回は、5%から8%に3%引き上げるだけでなく、10%へと、さらなる税率アップまで予告されていた。一方、今回は前回より小幅な2%の引き上げで、これで打ち止めとなる。税率の引き上げが家計や経済全体に与える影響は、より小さくなると思われる。さらに、買い控えが起きやすい高額な住宅や自動車は、駆け込み需要や反動減対策が検討されている。
――今後の課題は。
神野 軽減税率実施に向けた中小企業の準備が遅れているなどの指摘がある。複数税率に対応したレジ導入や受発注システムの改修支援など、事業者の納税事務に伴うコスト負担を政府がどれだけサポートできるか、しっかりと検討することが重要だ。