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【主張】文字・活字文化の日 本を手に取り言葉を磨こう
きょう27日は「文字・活字文化の日」。「ホッと一息 本と一息」を今年の標語に掲げる「読書週間」(11月9日まで)の初日でもある。
読書週間では、特に青少年に読書を勧める運動をテーマの一つに位置付けている。若い世代の活字離れが指摘されて久しいが、自らの世界を広げる良質な一書と出会う機会にしたい。
近年、漫画化や映画化によって再び脚光を浴びている、児童文学者・吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」。中学2年生の主人公に、叔父が読書や学問の大切さについて語る場面がある。
「一人の人間として経験することに限りがある。しかし、人間は言葉というものをもっている。だから、自分の経験を人に伝えることも出来るし、人の経験を聞いて知ることも出来る」
言葉とは、自分と他者をつなぐツールである。分断や憎悪を煽る言論がはびこる現代社会にあって、理解と協調を生み出す力もまた言葉にはあることを忘れてはなるまい。この点も良書に学ぶ意義の一つであろう。
気掛かりなのは、文化庁の世論調査で「日本語を大切にしている」と答えた人の割合が、同じ質問をした3年前の約79%から今年は約65%に大きく減少したことだ。本来の意味とは違う使い方をされる言葉も相変わらず多い。
言葉の持つ意味が時代とともに変化することは避けようもない。言葉遣いに関する世代間のギャップも世の常である。しかし、言葉に対する共通の土台が弱まれば、正確な意思の疎通は難しくなる。
この点について、「活字には言葉を修練し、社会の秩序を保つ力がある」との作家・清水義範氏の指摘(本紙10月10日付)を心に留めたい。読書によって正しい言葉や美しい文章に触れることの重要性を説いたものである。自らの言葉を磨く努力が大切だ。
活字文化の担い手である書店を取り巻く環境の厳しさにも触れておきたい。店舗数は10年前から約3割減少した。ネット書店の台頭が影響しているとはいえ、街の書店は図書館と並ぶ文化拠点としての役割もある。各店舗の努力を後押しする取り組みに官民で知恵を絞る必要があろう。