ニュース
【主張】核兵器禁止条約 オブザーバー参加で連帯感示せ
国際法に初めて「核兵器は違法」の規範が確立した。「核は非人道的」との被爆者の声が市民社会と国連を動かして実現した。
22日発効の核兵器禁止条約(核禁条約)は、核廃絶を求める国際世論に法的基盤を与えた。核兵器に対する包囲網は厳しさを増すはずだ。
日本は米国の核抑止力に安全保障を依存しているため核禁条約には加盟しないが、唯一の戦争被爆国として核廃絶をめざす姿勢は不変である。
これからは「核違法の世界」の中で「核のない世界」に向かうことになる。まずは、溝が深まる核保有国、非保有国双方による「核抑止によらない安全保障」を探るための対話の実現が目標となる。
すでに政府は2017年に対話の場として有識者による賢人会議を設置。19年には双方が核抑止について“礼節”ある議論をするよう求める議長レポートを公表している。
そして今、政府に求められているのは、年内にも開催予定の核禁条約締約国会合に被爆国の声を届け連帯感を示すことだ。
そのために公明党は締約国会合へのオブザーバー参加を政府に迫っている。政府は双方の溝を埋める「橋渡し役」になると主張してきた。真剣に検討すべきである。
核禁条約は締約国会合について、非締約国に対しても「オブザーバーとして出席するよう招請する」と定めている。そのため日本にも核保有国にも国連事務総長から“招待状”が届く。核禁条約は会合の議決権のないオブザーバー参加を広く呼び掛けることで、締約国会合を「核のない世界」に向けたフォーラムの一つとして位置付けていると考えることもできる。
核禁条約に反対の保有国と、その核兵器に安全保障を依存するNATO(北大西洋条約機構)諸国なども核兵器不拡散条約(NPT)のメンバーである。そして核禁条約はNPTを核軍縮の基礎として明確に認めている。ここに対話の共通基盤がある。
核軍縮を進展させ、そして核抑止論を乗り越えなければ「核のない世界」は夢物語である。核兵器に対する考え方を変えるためには双方の率直な対話が欠かせない。日本はその先頭に立ってほしい。