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2021年1月21日

災害弱者の避難 個別計画作成急げ

自治体の4割 未作成 
政府、法改正し努力義務化へ 
モデル事業も予算化

近年、激甚化する自然災害では、高齢者や障がい者などの“災害弱者”が逃げ遅れ、犠牲になるケースが後を絶たない。政府は、事前に一人一人の避難方法を決めておく「個別計画」作りを加速させるため、法改正に加え、2021年度予算案にモデル事業を盛り込んで対策に乗り出す方針だ。

個別計画 市町村の状況

災害時に自力での避難が難しい高齢者や障がい者らは「避難行動要支援者」と呼ばれる。個別計画は、この要支援者ごとに避難方法や避難先、手助けする人などを明記したもの。市区町村が民生委員や自治会、福祉関係者らの協力を得ながら作成を進める。円滑な避難に有効なことから、内閣府は13年に「個別計画を策定することが望まれる」と指針で示した。

しかし、あまり進んでいないのが現状のようだ。消防庁によれば、19年6月時点で要支援者の名簿を作成した市区町村は全体の98.9%に達するが、個別計画を作成済みの市区町村は12.1%、一部作成中は50.1%だった。未作成は37.8%と4割近くに上る。背景には、作成に法的根拠がないことや、ノウハウ(手法)と人材、予算不足などの課題が指摘されている。

取り組みを促すため内閣府は、策定を市区町村の努力義務とする災害対策基本法改正案を今通常国会に提出する予定だ。効果的な作成手法の構築に向け、21年度予算案では3600万円計上し、福祉専門職らが参加するモデル事業を複数の自治体で実施。課題を抱える自治体に専門家を派遣する事業も行う。個別計画策定に対する自治体への財政支援も地方交付税措置に盛り込む方向で調整している。

内閣府の重永将志参事官(避難生活担当)は「要支援者の状況や災害リスクを分析し、優先順位を付けて個別計画作りを進める必要がある。自治体側には福祉部局と防災部局の連携を密にするなど工夫してもらいたい」と強調する。

公明が積極推進

公明党は国会質疑や政府への提言を通し、個別計画の作成を強く促してきた。20年9月に党の「新たな防災・減災・復興政策検討委員会」などが行った21年度予算の概算要求への提言でも、個別計画の策定を盛り込んだ災害対策基本法の改正と関連予算の確保を主張。各地の地方議員も、議会質問などで積極的に推進している。

大分・別府市の取り組み
福祉専門職が協力 ケアの延長線上で進める

個別計画作りの先進事例として知られるのが、大分県別府市のインクルーシブ(包括的)防災事業だ。16年度に日本財団の助成を受けて始まり、19年度からは市の単独事業として実施。市議会公明党も推進してきた。

この事業は、普段から高齢者や障がい者のケアに携わるケアマネジャーや相談支援専門員の福祉専門職に、計画作りへ参加してもらうのがポイントだ。福祉専門職ならば、避難で配慮すべきことを熟知し、日頃のケアサービスの延長線上で計画作成を進めることができる。市は1計画当たり7000円の報酬を支払う。

避難を手助けする地域住民との調整も欠かせない。市防災危機管理課の職員が調整役を担い、地域住民と共に計画を練り上げる。計画作成後には、その通りに避難できるか防災訓練を行い、検証・改善も試みる。

市防災危機管理課の村野淳子防災推進専門員は「計画作りだけでなく、その環境整備が必要。作成の過程で、地域づくりや人づくりも意識しなければ、命を守ることはできない」と強調する。こうしてできた個別計画は「災害時ケアプラン」と位置付け、これまでに56人分が作成できたという。

相談支援専門員を務め、自身も身体障がい者の河野龍児さんは「従来は『災害が起きたら、どうせ助からない』と、諦めを感じていた障がい者・家族が多かったように思う。事業が始まり、『工夫をすれば助かる』と参加者の気持ちが前向きになった」と効果を語る。

事業は地域の結束にも役立っている。モデル地区の一つとなった亀川地区古市町自治会の後藤敏之会長は「計画作りや避難訓練を通して、障がい者らと住民が直接話し合う機会ができ、どうすれば皆が助かるのかという防災意識が高まった」と説明する。

事業は「別府モデル」と呼ばれ、兵庫県など他の自治体にも広がっている。

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