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医療的ケア児らの通学を支援
本格実施に“喜びの声”
看護師同乗で保護者の負担軽減
1人当たり10回まで利用可能
滋賀県
滋賀県は現在、たん吸引などの医療的なケアが必要な児童・生徒(医療的ケア児)を対象にした通学支援事業を実施している。公明党の長年の取り組みが実ったもので、このほど中村才次郎、清水ひとみの両県議が関係者から喜びの声を聞いた。
「いってらっしゃい」と福祉車両に乗る明日花さんに声を掛ける田中さん(右から3人目)と、(右隣から)中村、清水の両県議
県が昨年11月に公表した人工呼吸の管理などが必要な在宅の医療的ケア児は、287人。保護者らは、たんの吸引といった生活援助を24時間休むことなく行うため、慢性的な睡眠不足に。さらに負担となるのが、通学の送迎だ。
養護学校の通学バスには、人工呼吸の管理や吸引などの専門性を有する看護師が同乗していない。このため、保護者は介助や家事、仕事を抱えながらマイカーなどを利用して送迎せざるを得ず、「他の障がい児と同様、通学バスで通えるよう体制を整えてほしい」との声が上がっていた。
今回実施された事業は、県内の養護学校へ送迎する保護者の代わりとなって、県が委託したドライバーや看護師が同乗して通学支援するもの。片道1回とし、年間10回まで利用できる。
同県守山市に住む田中由記子さん(仮名)も通学支援を求めていた一人。田中さんは県立野洲養護学校への通学支援が開始された昨年12月18日、福祉車両に乗った小学6年生の娘・明日花さん(12)に、「いってらっしゃい」と笑顔で送り出し、明日花さんを乗せた車が見えなくなるまで手を振り続けていた。
体内のミトコンドリアが減少し、エネルギー代謝が阻害されて発達障害や肝障害などの機能障害が発生する極めてまれな難病・ミトコンドリアDNA枯渇症候群の明日花さん。これまで、明日花さんをマイカーに乗せて学校まで送迎していた田中さんは、「明日花のことが心配で、常に表情を確認しながら運転していた」という。明日花さんは一度、送迎中、目を離した隙に原因不明の呼吸停止に陥ったことがあったからだ。田中さんは当時を振り返り「今、明日花が生きているのは奇跡だ」と口にした。
公明、長年にわたり尽力
13年ほど前、田中さんと同じく県立野洲養護学校に送り迎えしていた守山市在住の保護者グループから実情を聞いた公明党の大瀬洋子市議(当時)は、梅村正県議(同)に相談。県議会定例会で通学支援の実施を訴えた結果、14年度から5年間、県が各市町に委託して、養護学校への通学支援の実証研究が実現した。
さらに、中村県議は15年の初当選以来、同年9月の定例会質問など、計7回にわたり本格実施に向けて粘り強く訴えてきた。
田中さんは「公明議員が自分たちの代わりとなって訴えてくれたおかげで、この日を迎えられた。本当に感謝している」と喜んだ。
中村県議は「保護者の負担軽減へ、利用回数を増やすなど、さらなる施策の拡充に取り組んでいきたい」と語っていた。