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【主張】自衛隊の医療支援 感染対策へ一層貢献できる体制を
「極めて緊張感が高く厳しい環境にある中での看護業務に献身的なご尽力を頂いた」
新型コロナウイルスの感染拡大で自衛隊に災害派遣を要請した北海道の鈴木直道知事は21日、任務を終え旭川市の医療機関から撤収する陸上自衛隊の看護師(看護官)らに感謝の言葉を贈った。陸自の別の看護官らは、大阪府知事の災害派遣要請を受け、15日から医療支援を続けている。
コロナ禍に対する自衛隊の災害派遣では、派遣された隊員が感染症対策の高い能力を示し、また、患者の輸送・生活支援では機動力を発揮するなど重要な貢献をしてきた。高く評価したい。
自衛隊はコロナ禍で35都道府県で災害派遣を実施(24日現在)。ほとんどが終了しているが、台風被害での災害派遣も重なり人員の余裕もなく、予定されていた多くの訓練を中止して対応してきた。
特に、医療支援の中核となる医師(医官)、看護官は、防衛省によるとそれぞれ約1000人で、全国の自衛隊病院や部隊のほか、駐屯地の医務室などで勤務している。自衛隊病院や防衛医科大学校病院もコロナ患者を受け入れているため、岸信夫防衛相は8日の記者会見で、医官や看護官の派遣要請が増えた場合「要請をそのまま受け入れるのは、かなり困難を伴うのではないか」と述べた。
医官、看護官の養成には医療の専門教育以外に、幹部自衛官としての教育も必要であり、増員も容易ではない。
コロナの感染拡大は今も続き、さらに将来、新たな感染症のパンデミック(世界的大流行)発生の可能性もある。災害派遣が自衛隊の「本来任務」である以上、現在のコロナ禍を検証し、特に、医官と看護官の派遣について増員も含め準備する必要がある。
コロナ禍での災害派遣のうち、自治体職員を対象にした感染防止の教育支援は1日で終わるが、患者の輸送・生活支援は1週間程かけて業務態勢を構築し、後は自治体などが引き継ぐ。しかし、医療支援の引き継ぎができるのは医師、看護師しかなく、その人材にも限りがある以上、撤収時期の見極めも難しい。
国の感染症対策全般の中で、自衛隊の医療支援のあり方を検討する必要がある。