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2021年度 政府予算案のポイント
政府が21日に閣議決定した一般会計総額106兆6097億円の2021年度予算案のポイントを紹介する。
社会保障
保健所強化、介護報酬上乗せも
社会保障分野の予算案は、新型コロナウイルス対応を重点と位置付け、医療支援や保健所の体制強化、介護事業所への手当てといった項目が並んだ。膨張が続く社会保障費は前年度比3500億円増と例年より伸びを抑制した。
新型コロナ対策では、院内感染防止に取り組む医療機関への診療報酬の特例として、初診、再診料に一定の点数を加算。関連経費218億円を盛り込んだ。保健所の体制強化にも5億6000万円を計上した。
プラス改定となった介護報酬、障がい福祉サービス報酬は、事業者の感染対策の負担が重くなっている状況に配慮し、0.05%分を新型コロナ対応の措置として上乗せした。
21年度から始まる「新子育て安心プラン」に基づく保育の受け皿整備や、保育人材の確保などに2590億円を盛り込んだ。20年度第3次補正予算案で対応した、1月から始まる不妊治療の助成拡充と併せ、少子化対策を推進する。
デジタル庁
来年9月設置へ368億円
来年9月に設置されるデジタル庁の予算案は368億円となった。行政デジタル化の司令塔として、政府情報システムの整備・管理の基本方針を策定、事業の統括に当たる。デジタル化関連では、内閣官房とデジタル庁で府省庁共通のシステム整備に向け計2986億円、総務省がマイナンバーカード普及のための費用1001億円を計上した。
デジタル庁予算の内訳は、運営や政策実施に必要な経費81億円、情報システム関係予算287億円。このうち情報システム関係には、国と地方が住所や土地といった情報を共通利用するためのデータベースを構築するための費用44億2000万円を盛り込んだ。
脱炭素
再エネ導入自治体を支援
地球温暖化対策では、菅義偉首相が宣言した50年までの温室効果ガスの排出実質ゼロに向け、脱炭素型の地域づくりとライフスタイルの普及を推進する。再生可能エネルギーを積極導入する自治体を対象とした「再エネ強化支援パッケージ」を創設し、204億円を盛り込んだ。
パッケージでは、自治体が地域の特性を生かして太陽光や風力、地熱など再エネ発電設備を整備できるよう、計画づくりや住民らとの協議を促進する。発電所の建設費用も補助し、ソフトとハードの両面で再エネの活用を広げる。
このうち、災害時に避難先となる公共施設を対象に、太陽光パネルや蓄電池などの整備費用を補助する事業に50億円を盛り込んだ。平時から温室ガスの排出を抑え、災害で停電が起きても非常用電源を確保できるようにする。
中小企業
部品供給網にも手厚く
政府は20年度第3次補正予算案と21年度予算案で、新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受けた中小企業向け支援策として異例の規模となる約2兆4000億円を充てる。
3次補正で計上した業態転換に取り組む中小などに最大1億円を支給する「事業再構築補助金」を目玉に、廃業を検討する企業への事業承継支援などを用意。コロナ禍で浮き彫りとなったサプライチェーン(部品供給網)不安の解消に向け、医療資材などの確保にも万全を期す。
サプライチェーン不安解消へ人工呼吸器を含む医療資材の国内開発を手厚く支援する。産業高度化と安全保障の両面で不可欠な人工知能(AI)、高度半導体などの開発やベンチャー育成と合わせ、来年度予算案に約527億円を計上した。
このほか、官民のデジタル化の加速に向けた関連予算も確保した。
観光
ワーケーション 普及後押し
観光地で余暇を楽しみながら働く「ワーケーション」の普及が柱だ。受け入れを希望する地域と、社員を送り出したい企業をマッチング。旅行会社によるツアー商品の開発も後押しする。休暇取得の分散化など、新型コロナウイルス感染拡大に対応した「新たな旅行スタイル」として、苦境にあえぐ観光業を支援する。
ワーケーションの普及には、観光庁が5億400万円を新規事業として計上。自治体や企業の間では、既に誘致合戦が繰り広げられており、政府としても温泉街や国立公園、離島で定着を図る。
観光支援事業「Go To トラベル」の費用は、20年度予算の予備費と第3次補正予算案で計1兆3430億円超を確保。新型コロナの感染再拡大を受け、同事業は12月28日から21年1月11日まで全国で一時停止するが、事業自体は当初期限の21年1月末から6月末まで延長する。
防災・減災
住民と連携して流域治水
公共事業関係費は、前年度当初予算と比べ26億円増の6兆695億円となった。近年激甚化する自然災害に対応するため、国土強靱化に向けた21年度からの「5カ年加速化対策」を踏まえ、国や自治体が住民、企業と連携してハード・ソフト両面から対策を講じる「流域治水」などを進める。
21年度予算案では、自治体の防災対策を支援する「防災・安全交付金」に8540億円を充てる。
このうち流域治水を推進する取り組みに約3000億円を優先配分。河川堤防の強化や河道の掘削に加え、リスクの高い地域からの移転など総合的な対策を後押しする。排水しきれない雨水が市街地にあふれる「内水氾濫」対策も強化する。
教育
25年度までに35人学級
公立小学校の1クラスの人数を25年度までに全学年で35人以下に引き下げることが決まった。教職員定数は「35人学級」への移行や学校の働き方改革、障がいのある児童生徒への通級指導に対応するため、3141人増やす。少子化に伴う自然減や教職員の配置見直しなどを踏まえると、実際の定数は差し引き474人減となる。
新型コロナウイルス対策で学校の消毒作業が必要となっているため、業務を支援する「スクール・サポート・スタッフ」など外部人材の活用を充実させる。派遣事業に同28億円増の90億円を確保した。
パソコン端末を活用したデジタル教科書を普及させるため、小学校5、6年生と中学校の全学年に1教科分を無償提供し、操作性や効果を検証する。希望する国公私立の学校が対象で、全国の5~6割程度分に当たる22億円を盛り込んだ。
復興
東日本大震災で移住促進の事業
東日本大震災からの復興に向け、新たに移住・定住促進事業を盛り込み、関連経費として50億円を見込む。東京電力福島第1原発事故の被害を受けた周辺12市町村に移住する世帯に最大で200万円を支給するほか、事業に取り組む自治体に交付金を配分する。
新規ではこの他、12市町村の営農再開を支援するため、農産物の高付加価値化を進める事業に52億円を充てる。新産業創出の基盤として福島県内に整備する「国際教育研究拠点」の構想策定などに計2億円を投じる。
雇用
利用増の雇調金延長、大幅増額
雇用対策では、休業手当を支払って従業員を休ませた企業を対象に、一部を肩代わりする雇用調整助成金(雇調金)などの財源として一般・特別会計で6240億円を計上し、前年度当初の35億円から大幅に増額した。新型コロナウイルス流行後に導入された特例措置は、助成率上限を休業手当の3分の2(日額上限8370円)から全額(同1万5000円)に引き上げ、利用が相次いでいる。
現行特例が期限を迎える来年2月末以降、段階的に縮小しつつ一定の支援を継続する。
一方、コロナ収束後の産業構造を念頭に、円滑な労働移動を後押しする。出向する労働者の雇用元と受け入れ先を一体的に支える新助成金として537億円を確保した。
コロナ対策
5兆円予備費で機動的に対応
政府は21年度予算案と20年度第3次補正予算案を一体の「15カ月予算」と位置付け、新型コロナウイルスへの備えを強化する。追加対策が必要になった場合の財源として21年度予算にコロナ予備費5兆円を計上。3次補正ではPCR検査の充実やワクチン接種などコロナ拡大防止策に4兆3581億円を盛り込んだ。
21年度予算では、5兆円の「新型コロナウイルス感染症対策予備費」で政府が機動的に新たな政策を講じられるようにする。このほか、45億円を計上し、人工呼吸器などを念頭に海外依存度の高い先進的な医療機器の国内開発を後押しする。
コロナ対策を集中的に計上した3次補正では、感染の有無を調べるPCR検査にかかる費用のうち、国の負担分などとして672億円を確保した。開発されたワクチンは自己負担なしで接種を受けられるため、その費用などとして5736億円を盛り込んだ。
都道府県が病床や軽症者の宿泊療養施設などを確保する費用として「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」を1兆3011億円確保。冬を迎え、新規感染者数は増え続けており、受け入れ体制の整備を加速させる。









