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対談 誰一人取り残さないデジタル社会めざして
平井卓也 デジタル改革担当相 × 高木美智代 公明党推進本部長(衆院議員)
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本のデジタル化の遅れを浮き彫りにしました。これを踏まえ、政府・与党は、「デジタル庁」創設などデジタル社会の構築に向けた検討を加速しています。めざすべきデジタル社会の具体像を巡り、平井卓也デジタル改革担当相と公明党の高木美智代デジタル社会推進本部長(衆院議員)が語り合いました。
全ての人に優しいデザインに 高木
高齢者、障がい者 十分に配慮 平井
高木 コロナ禍を通して、いかに日本のデジタル化が遅れているかを国民が実感しました。
特に、全ての人に一律10万円を支給した特別定額給付金では、「行政に届け出ている口座番号がなぜ使えないのか」「給付が遅い」といった声があり、自治体の現場も混乱に陥りました。
デジタル化は、人と人との分断を強いるコロナ禍を乗り越えていく一つの手段でもあります。教訓を踏まえ、次の時代に備えていかなくてはなりません。
平井 これだけ素晴らしい通信インフラを持ちながら、国が活かし切れなかった。それが今回、デジタル庁創設をめざす、きっかけの一つになりました。
高木 めざすべきデジタル社会のビジョンとして、公明党は一貫して「豊かな国民生活と誰一人取り残さない社会」を訴え、11月には菅義偉首相と平井担当相に提言しました。
“誰一人取り残さない”と訴えたのは、全ての人に優しいユニバーサルデザインを前提にすべきであり、こぼれ落ちそうな人を置き去りにしてはならないからです。また、どこまでも国民にとっての利用しやすさ(アクセシビリティー)を重視してもらいたいと思います。
平井 今、お話になったことは、これから抜本的に見直すIT基本法の中に、今後10年、20年と取り組みを続けていくための基本理念として、きっちり書き込みます。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を世界に類を見ない日本の特長にしていく考えです。
そのために徹底的に国民目線で使い勝手を良くし、高齢者も、障がい者も、諦めることなく使ってもらえる設計を必須とする方針です。
高木 公明党の提案で実現したICT(情報通信技術)機器の利用をサポートする「デジタル活用支援員」も、ぜひ全国に広げてください。通信環境が整えられない生活困窮者への配慮も含め、誰もがデジタル社会の恩恵を実感できるよう、党としても全力で取り組んでいきます。
平井 分かりました。デジタル機器の操作が苦手な人には、身近な人によるサービスなどを手厚くし、行政サービス全体の質の向上につなげていきます。そして、格差を生むようなデジタル化とは一線を画したデジタル社会をめざします。
行政手続きスマホ一つで 平井
必要な支援、確実に国民へ 高木
高木 行政手続きに関する利便性の向上が、最優先課題です。窓口に行かなければ手続きができない、しかも複数の窓口を回る必要がある、これでは国民に負担をかけすぎです。
平井 出生や子育て、就学、引っ越し、介護、相続といった各ライフイベントでの手続きは、全てスマートフォン(スマホ)でできるようにします。スマホにマイナンバーカードの機能を搭載できるようにし、マイナンバー制度の個人向けサイト「マイナポータル」から24時間365日、それも一つの手続きを60秒以内で完結するような圧倒的な使いやすさをめざします。
また、これまでの“申請主義”の姿勢を改め、行政側からお知らせや案内が届く「プッシュ型」へ転換していきます。
高木 ぜひお願いします。制度を知らない人が、いつまでたっても何の行政支援も受けられないのでは不公平です。必要な人に必要なサービスがしっかりと届き、不正防止にも万全を期す仕組みにしてもらいたいです。
平井 教育や働く現場でもデジタル化を後押しします。また、高齢社会ですから、病院に通うのが大変な高齢者が、自宅で診療や薬の処方が受けられるようにすることも重要です。
高木 どこの病院でも既往歴が一目で分かれば、適切な処置につながります。
ただ、その時に皆さんが懸念されるのが、個人情報が守られるのかという点です。国と地方でバラバラになっている個人情報保護法制を束ねる法整備をぜひ進めたいと思います。
平井 通常国会では、デジタル庁創設に向けた関連法案を提出する予定です。デジタル庁には、首相直轄の恒久組織として強い権限と予算をコントロールする機能を持たせ、行政システム全体を見直すことができる初めての組織にします。
高木 わが党も、かねて政府にIT政策の司令塔となる組織が必要だと訴えてきました。官民から意欲ある人材を集め、国と地方の行政システムの標準化・共通化を主導し、目に見える形で結果を生み出してもらいたいと期待します。“絵に描いた餅”とならないよう、しっかりと後押ししていきます。