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【主張】大学院生への支援 経済負担の軽減へ重要な一歩
経済的な不安を抱えることなく研究に打ち込めるよう大学院生を支えたい。
今年度第3次補正予算案には、大学院生の研究費や生活費を支援するための経費が計上された。約1000人を対象に1人当たり年間230万円程度を支給する。
大学院生に対する経済的支援は、公明党学生局などが政府に要望を重ねてきたものであり評価したい。
日本の大学院生の人数は、ピークだった2003年度の約1万2000人から、昨年度はほぼ半分の5963人まで減っている。
人口100万人当たりの博士号取得者の数も、欧米やアジア諸国が増加傾向にあるのに対し、日本は08年度の131人から17年度には119人まで減少。米国、ドイツ、韓国の半分以下の水準にまで落ち込んでいる。
日本で大学院生が減少している大きな要因は経済的な負担の重さだ。6割以上の大学院生は返済義務のある奨学金などの借入金があり、博士課程修了時に300万円以上の借入金を抱えている学生が4割に上るとの調査もある。
欧米では、大学院に進学する時点で研究費が支給され、授業料は無償もしくは給付型奨学金で実質無償になっているケースが多いという。
経済的な負担により、学問を究めたいとの志を貫くことが困難になっている日本の現状は改善すべきであり、今回の大学院生に対する支援策は重要な一歩と言えよう。
日本の将来にとっても大学院生への支援は重要だ。デジタル社会の実現や気候変動対策、少子高齢化への対応など、わが国が直面する重要課題の解決に向けて若き英知にかかる期待は大きい。
経済的な問題と同時に指摘しておきたいのは、大学院生の進路に対する不安である。
博士号を取得した後に大学に職を得ても任期付きのケースが多く生活は不安定だ。企業も年齢の高さなどを理由に敬遠しがちで採用しても待遇は決して高くない。高学歴に見合った待遇で迎える欧米とは大きな違いがある。
大学での安定したポストの増設のほか、公的機関や企業による積極的な採用と待遇改善についても取り組む必要がある。