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超小型EV“地域の足”に
高齢者の新たな交通手段
家庭用電源で充電可能
利用者「自転車のような感覚」
愛知・豊田市
愛知県豊田市の中山間地域である旭地区と足助地区で住民の“新しい足”として注目されている超小型の電気自動車(EV)、愛称「里モビ」。現在、30人の住民が利用している。公明党の里見隆治参院議員はこのほど同市を訪れ、里モビの活用方法を探る「里モビLIFEプロジェクト推進協議会」の戸田友介氏らから利用状況を聞いた。加藤貴志県議、党市議団(小島政直団長)が同行した。
戸田氏(右から2人目)から「里モビ」の説明を受ける里見氏(左隣)ら
里モビはトヨタ車体株式会社が製造する超小型EV。車幅は1.1メートルと軽自動車に比べても小回りが利く。家庭用のコンセントから充電可能で最大走行距離は50キロ。急発進することがないため、高齢者も安心して運転できる。運転するには普通自動車運転免許が必要。
豊田市の中心街から車で約1時間の場所にある旭、足助両地区は交通手段が少なく、特に、旭地区を走るコミュニティーバスは4路線がそれぞれ週1回しか運行しておらず、それ以外の日は、事前に予約しなければならない。そのため、住民の生活の“足”はもっぱら自動車だ。同市では、こうした中山間地域での高齢者の新たな移動手段の確保と生活の質の向上をめざし、2016年に里モビの実証実験を開始。一般財団法人「トヨタ・モビリティ基金」から支援を受け、名古屋大学などと協働で3年間にわたって地域住民に無償で貸し出し、利用効果を検証した。
その結果、友人宅への訪問や農作業に出掛けるなど10キロ圏内の“チョイ乗り”によく使われていることが分かった。
18年から使用する鈴木智さんは「スーパーや集落の寄り合いに行く際に使う。自転車のような感覚で乗れて使いやすい」と満足気に話す。1年前から自動車と使い分けている近藤千恵子さんは「自動車の年間走行距離が半分になった。なるべく自分たちで動かなければいけないと思っていたのでちょうど良い」と喜んでいた。戸田氏は「里モビは自家用車でも公共交通機関でもない高齢者の“第3の足”として活用できることが利点だ」と評価する。
利用結果が好評だったことから事業を継続することになり、里モビは名古屋大学から一般社団法人「おいでん・さんそん」に30台が無償で譲られた。利用者は現在、同法人から里モビを有償で借りている(1人乗り用は保険料や維持費込みで年5万2000円)。2年経過すると、リースの継続、返却、本体の無償譲渡のいずれかを選ぶ。
おいでん・さんそん、豊田市、名古屋大学などは協力して里モビのさらなる活用方法を探るため18年に「里モビLIFEプロジェクト推進協議会」を設立。今年から6台を最大時速60キロから30キロへ制限して高齢者らがより安全に移動できるかなどの実験を行っている。
里見氏らの視察では、戸田氏が普及に向けた課題に言及。「現行のリース料だけでは事業継続が見通せないので、補助金があれば助かる」と支援を求めた。里見氏は「公明党のネットワークを活用して、里モビが地域の実情に応じて広がるように推進していきたい」と話していた。