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2020年12月13日

潮流2020

脱炭素社会の実現 
気候危機への意識が不可欠 
東京大学名誉教授 山本良一

脱炭素社会の実現に向け、これまでも多くの政策が実施されてきた。CO2削減の革新的技術の開発支援は当然として、例えば炭素税や排出権取引、グリーン購入法、最近ではCOOL CHOICE(賢い選択)などである。賢い選択では低炭素製品への買い替え、低炭素サービスの選択、低炭素なライフスタイルへの転換が推進されている。

環境モデル都市や環境未来都市、最近ではSDGs未来都市作りへの支援もある。これらの政策のそれぞれは、それなりに有効だったとしても、全体として脱炭素社会へ大きく近づいていないのはどうしてであろうか。それは気候非常事態(Climate Emergency)の認識と社会の総力を挙げての取り組み、動員(Mobilization)が欠けていたからではないだろうか。

気候危機を突破するには、まず温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を達成し、続いてビヨンド・ゼロ(カーボンマイナス)で大気中に蓄積した温室効果ガスを除去するところまで進まなければならない。パリ協定のより厳しい温度目標1.5度を達成するには2050年カーボンニュートラルが求められている。

そこで昨年より自治体ごとに気候非常事態宣言(CED)を行い、50年より前にカーボンニュートラル目標年を設定して気候動員のアクションプランを作成する動きが世界的大潮流となった。現在、33カ国の1856を超える自治体や国家がCEDを行い、カーボンニュートラル実行計画を作成中である。

この利点は地方議会や自治体の首長が政治的決意をCEDによって市民に示し、気候危機意識が地域社会に共有されることだ。また、幅広い市民や関係団体の参加によって作成することで、政策の実効性が高まることが期待される。自治体がカーボンニュートラル・アクションプランを競い合うことで、当然企業を含むあらゆる社会的組織も作らざるを得なくなる。

したがって、自治体が野心的な目標年(50年より前)を設定し、他の地域よりもより早くカーボンニュートラルを達成するための刺激や支援を国は与えるべきであろう。菅義偉首相は所信表明演説で50年カーボンニュートラル目標を世界に公表し、国会では衆参両院で気候非常事態宣言が採択された。国は各自治体がCEDをして具体的なカーボンニュートラル・アクションプランを作成するあらゆる支援を行うべきである。

町や村で単独では対応できないところは地域自治体が連合して取り組むべきだ。欧米の先進自治体では、この10年でカーボンニュートラルをめざすところも出てきている。コペンハーゲンは2025年、英国のブリストルをはじめ160を超える自治体は30年カーボンニュートラルをめざしている。日本の自治体がより野心的な目標設定をするような刺激が必要であろう。

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