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コラム「北斗七星」
国立競技場を設計した世界的建築家・隈研吾氏の作品を紹介した展覧会が、高知市の高知県立美術館で開催されている。コロナ禍の中で、新しい公共性や未来の都市のあり方などを考える機会に、とのフレーズに誘われて入場した◆展示は、公共性の高い30件の建築物が模型や写真で紹介され、隈氏自身の解説付き。市役所や駅、文化施設、修復・再生した居酒屋などバラエティーに富み、建物の内部空間をリアルに体感できるVR(仮想現実)コーナーもあった◆隈氏の建築は、木材など自然素材を生かすのが特徴の一つといわれる。そのきっかけになったのが、高知県梼原町にある古い芝居小屋「ゆすはら座」の保存運動に関わったことだった◆その縁で隈氏との交流が続いてきた同町には、魅力的な建物が次々と誕生。「雲の上のホテル・レストラン」や「雲の上の図書館」など六つの隈建築が存在する“聖地”に。同展の開催に当たり、隈氏は「梼原町で、自分の建築の方向性とでもいうべきものを見つけることができました」とメッセージを寄せている◆展示では、建物というハコの外にある公共空間に出て、ネコのように都市を下から見る視点に着目すべきだという新鮮な提案も。コロナ禍を乗り越えようと生み出される発想が、新たな創造の力になると信じたい。(祐)