公明党トップ / ニュース / p133502

ニュース

2020年12月11日

社会、地域で支えよう被災地の子どもたち

東日本大震災9年9カ月

きょう、東日本大震災から9年9カ月。あの年に生まれた子どもは小学生に、当時の小学生は大学生や社会人と育っている。時が経過してもなお、心身に影響を受け続けている子どもも少なくない。さらに家庭や地域の環境も変化し、経済苦や社会的孤立といった新しい課題も生まれている。岩手、福島で子ども支援を行う民間団体の代表に話を聞くとともに、遺児の交流の場「仙台レインボーハウス」の取り組みを紹介する。=東日本大震災取材班

「受援力」育むために
ひとり親家庭を支援するNPO法人インクルいわて 山屋理恵理事長(岩手県)

ひとり親家庭を支援するNPO法人インクルいわて 山屋理恵理事長

東日本大震災の前から岩手県は自殺率が高い上、生きづらさを抱える人が相談や支援を受けられる社会資源も多くありませんでした。そこに3.11の大震災が直撃し、県内では一瞬にして500人が遺児になりました。その後も震災関連死や離婚などで、ひとり親家庭が増える一方、相談や支援を担う社会資源は、今も十分とはいえません。

子どもを支えるには親の支援が欠かせません。ひとり親は1分でも長く子どもと触れ合いたいし、収入のために1分でも長く働きたいのです。そんな中でも悩みを話せるよう、夜の電話相談を行っています。

子ども支援でめざしているのは「生きる力」を付けること。学力に加え、意欲や自制心、社会性といった「非認知能力」が重要です。そうした力を付けるには、子どもが周囲の大人を基本的に信頼していなければなりません。信頼感は人と関わることで培われます。その一環として地域、学校、企業と連携し、子ども食堂を運営。子どもたちが困った時にSOSを出し、支援を受ける「受援力」を育むことをめざしています。

子ども支援は、当事者のサポートと子どもが育つ地域づくりを両輪に進めなければなりません。家族がどんな形になっても、子どもが安心して育ち、自立できる仕組みが「復興のまちづくり」に必要です。

喪失感受け止め支援
親を亡くした子どもらをサポートするNPO法人ReLink 佐藤利憲理事長(福島県)

親を亡くした子どもらをサポートするNPO法人ReLink 佐藤利憲理事長

大切な「人」や「もの」と別れる喪失体験から生まれる悲しみや恋しさといったさまざまな感情全てを「グリーフ」といいます。

グリーフは、誰にも起こる自然な感情で、正常な反応です。家族を亡くした人、特に自死遺族の親や子どもは「話すと気を遣わせる」と周囲に自分の心を打ち明けづらく、ともすれば孤立しかねません。そこで「親を亡くした子ども」「子どもを亡くした親」を対象にグリーフを支援するプログラムを続けてきました。100人いれば100通りのグリーフがあり、一人一人に寄り添う支援を心掛けています。

東京電力福島第1原発事故で多くの子どもが避難生活を余儀なくされました。例えば野球やサッカーが大好きだったのに避難生活で続けられなくなった子がいます。「みんなも大変だから」と自分の夢を諦めた子どもが少なくないのです。

大学生から、コロナ禍の自粛生活で「小学生の時の震災体験を思い出してつらくなった」との話を聞きました。誰もが何かをきっかけに、ふたをしていた感情が湧き上がります。また「震災〇年」などに心が揺れ動く「記念日反応」が起きることもあります。

震災を経験した子どもたちには、自分自身の心に丁寧に向き合ってほしい。そのためにも人とつながり、支え合える地域づくりに取り組むつもりです。

遺児に寄り添う心のケア
仙台レインボーハウス(宮城県)

震災などで大切な人を失った子どもたちの心のケアを行うプログラム=仙台市(2011年9月撮影)

「仙台レインボーハウス」に通う一人の男子中学生がいる。少年の家は母子家庭だった。だが9年前、3.11の大津波で母親を失ってからは祖父母に育てられている。

あの時、幼くて親の死を実感できなかったが、成長とともに親がいない喪失感や将来への不安にさいなまれるように。職業などのロールモデル(模範)となる人が周囲にいないことで、中学3年になった今、自身の将来が描けないでいる。

そんな少年が安心できる居場所が「レインボーハウス」だという。

「親を失った遺児たちは進学や就職などを考える際、ヒントを得る機会が減っている」。こう話すのは「東北レインボーハウス」の西田正弘所長。西田所長らは、親を亡くし、傷付いた子どもの心に寄り添う活動を震災直後から続けてきた。

親がいない寂しさや悲しみ……さまざまな感情を抱え込む子どもたち。そんな気持ちを吐き出し、向き合える手助けをするプログラムを定期的に開催している。

これを支えているのが学生や会社員、主婦などの大人たち。子どもの心のケアに関する講座を受講した人がファシリテーター(世話人)を務める。参加した子ども一人にファシリテーター一人が一緒に寄り添い、ゲームやお絵描きなど子どもがやりたい遊びをする。

このほか、おやつの時間やお話の時間が設けられ、子どもたちが自分の気持ちを表現する場をつくっている。その際、ファシリテーターは、子どもが自分で話すまで待ち、耳を傾ける。子どもに主導権を持たせることが重要だ。

子どもたちは「同じ境遇の人がいて話しやすい」「私は一人じゃないという気持ちになれる」場として参加しているという。

レインボーハウスを運営する一般財団法人あしなが育英会によると、震災で両親を亡くした18歳未満の子どもは285人、ひとり親になった子どもは1798人。西田所長は「安心と安全を実感でき、人と関われる居場所が子どもたちの心を支える」と話している。

西田所長から震災遺児の支援の課題について話を聞く党宮城県本部の議員団

被災地での子ども支援のあり方を探ろうと、公明党宮城県本部(代表=庄子賢一県議)の議員団はこのほど、「仙台レインボーハウス」を訪れた。

西田所長は「震災から『もう10年だから大丈夫』ということはない。子どもたちの心は現在進行形で変化し続けている」と指摘。その上で「新しい課題の対応へ地域の支援機関との協働が必要になる」と述べた。

議員団は「社会全体で遺児を支える環境づくりを探りたい」と語っていた。

レインボーハウス

阪神・淡路大震災後、あしなが育英会が遺児支援のため神戸市に開設。東日本震災後、宮城県仙台市、石巻市、岩手県陸前高田市にも設置された。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

定期購読はこちらから

ソーシャルメディア