ニュース
コラム「北斗七星」
「深夜、タクシーで帰宅中。持ち合わせがなく『ここで降ります』と言うと『若い子が遅くにダメだよ。気をつけなさい』とメーターをとめ、最後まで乗せてくれました」。大手小町編集部が中公文庫から出した近著にある一文だ◆読売が運営する掲示板「発言小町」を収めた同著。副題には『600万人が泣いた魔法の言葉』とある。体験を寄せたのはミーさん(仮名)だ。30年ほど前、北斗子も大阪で仕事を終え、友人らと合流。飲んで終電に遅れ、タクシーで同じ経験をしたことがある◆今年の年の瀬は終電を逃す機会も大幅に減るだろう。コロナの感染拡大で大阪府は非常事態を宣言。一部で居酒屋などへの営業時間短縮や不要不急の外出自粛を訴えている。感染を抑え重症化を防ぐのが目的。近く、コロナ重症センターが運用されるが、看護師は充足できぬと聞く◆そういえば『魔法の言葉』に、春の緊急事態宣言時、手作りマスクを着け売り場に出ていた店員、りんごさん(仮名)の話があった。客が「手作りまでして、がんばってくださるおかげで、こうして買い物ができます」と。りんごさんは「心から幸せを感じた出来事でした」と綴っている◆医療機関に加え、飲食業界からも上がる悲鳴。カギは財源と人材確保だ。それを生かすのは、困難にも優しさを失わぬ、しなやかな社会だろう。(田)