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【主張】生殖医療と親子関係 法律で確定させる意義大きい
生殖補助医療で、第三者の精子や卵子の提供を受けて生まれた子の親子関係を定める民法特例法案(議員立法)が、きょう4日の衆院本会議で成立する見通しだ。
同法案は公明党が与野党の合意形成を主導、秋野公造参院議員が提案者となり、11月16日に与野党5党で参院に共同提出していた。
生殖補助医療によって生まれた子については、親子関係を巡って訴訟に発展するケースもある。法律上の親を確定させ、親子関係を安定化させる意義は大きい。とりわけ、不妊に悩む夫婦にとっては朗報となろう。
生殖補助医療は、人工授精や体外受精などによる不妊治療を指す。技術の進展により不妊治療で生まれる子は増えており、子どもを望む夫婦の選択肢の一つとして定着しているのが現実だ。
しかし、秋野氏が同法案の趣旨説明で述べたように、これまで生殖補助医療には法律上の位置付けがなかった。また、現行の民法は第三者が関わる生殖補助医療による出産を想定していないため、精子や卵子の提供を受けた不妊治療で生まれた子の法的身分が確立されていなかった。
このため法案では、女性が第三者の卵子で出産した場合、卵子提供者ではなく出産した女性を母とするとした。妻が夫の同意を得て、夫以外から精子の提供を受けて妊娠した場合、夫は自分の子であることを否認できないことも規定した。生まれた子にとっても、親子関係に法的な裏付けがあることは重要だ。
また法案は、当事者の十分な理解と意思、精子や卵子を採取・管理する際の安全性の確保など、生殖補助医療の基本理念を明記し、国と医療関係者の責務を定めている。
一方で、多くの課題を積み残したのも事実である。
「出自を知る権利」をはじめ、精子や卵子の売買・あっせんの規制、代理出産の是非などについては、検討事項として「おおむね2年をめどに必要な法的措置を講じる」ことを法案の付則に記した。
検討すべき課題について立法府は、生まれてくる子どもの人権と幸福を最優先にしながら真摯に議論を重ね、国民的な合意づくりに努めるべきである。