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消費税10% 軽減税率 実施まで1年
家計の負担を軽く
飲食料品全般などが対象
各国で定着、世界標準の制度
2019年10月の消費税率10%への引き上げまで1年となった。家計の負担を和らげるため、飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率は、公明党の粘り強い主張で、消費税率が10%になるのと同時に実施される。期待される軽減税率の効果や、導入に向けた中小企業支援策などについて2回に分けて解説する。
軽減税率は「飲食料品の税負担を軽くしてほしい」との生活者の切実な声を受け、政党の中で唯一、公明党が主張してきたものだ。
対象品目は、酒類や外食を除く飲食料品全般と定期購読の新聞(週2回以上発行)で、消費税率引き上げ後も、これらの品目は税率が8%に据え置かれる。
海外でも消費税(付加価値税)の軽減税率は多くの国で導入されており、事実上、「世界標準」の制度となっている。
消費税率10%への引き上げにより、年5.6兆円の国の税収増が見込まれているが、その目的は、少子高齢化に伴って増大する社会保障費の確保と幼児教育の無償化など教育負担の軽減に充てること。さらに、後世代の負担を減らすため、借金に相当する国債の返済分に充てることだ。
家計負担を軽くする軽減税率の効果は広く認識されており、日銀の経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、19年10月の増税に伴う家計負担増額は2.2兆円で、14年4月の前回増税時(8兆円)の4分の1程度にとどまるという。日銀は、公明党が進めてきた軽減税率による負担軽減効果を1兆円、教育無償化では1.4兆円などと試算している。とりわけ、消費税は所得の少ない人ほど負担感が重いという「逆進性」があり、軽減税率はそれを緩和する。
消費税率引き上げ時の負担軽減策について、給付つき税額控除なども検討されていたが、軽減税率が採用されたことには理由がある。
まず、痛税感の緩和を実感できるかどうか。給付つき税額控除は、低所得者のうち所得税などの納税者には減税し、減税しきれない納税者や課税最低限以下の所得の人には現金を給付する制度。このため減税や給付は、かなり後になり、日々の買い物の際には負担が軽減されない。
さらに、対象となる低所得者を絞り込む基準となる所得や資産を正確に把握するのは現状では困難で、制度を公正・公平に運用するのが極めて難しいことも問題だった。
急がれる企業の対応
中小の8割が手付かず
安倍首相が準備加速を訴え
2019年10月の消費税率10%への引き上げと同時に実施される軽減税率。実施された際、食品などを扱う小売事業者などは、8%と10%の税率の違う品目ごとに売上高や仕入れ代金を仕分けして計算し、納税する必要がある。そのため、複数の税率に対応したレジの導入や受発注システムの改修といった準備が欠かせない。
しかし、日本商工会議所が9月に公表した調査によれば、中小企業の約8割が、軽減税率について、経理方式の変更の準備に着手していなかった。調査結果からは企業の慎重な姿勢もうかがえるが、安倍晋三首相は、来年10月の消費税率10%への引き上げに向け「軽減税率の実施への対応をはじめ、政府一丸となって、関係者の準備をしっかりと支援する体制を整えてもらいたい」(5日、経済財政諮問会議)と強調している。
税率の引き上げと軽減税率の導入が政府の既定路線となり、実施まで1年を切る中、企業側の準備が急がれる。中小企業庁は「直前になってレジの導入などが集中すれば、レジ機材やシステム技術者が不足することも想定される。企業には、早い段階からの準備をお願いしたい」と話す。
円滑な軽減税率の実施に向け、公明党の推進により、政府は「軽減税率対策補助金」を設けている。
同補助金では、レジ導入の費用を原則3分の2補助する(3万円未満のレジ1台のみの場合は補助率4分の3)。補助上限額は1台当たり20万円となる。
また、受発注システムの改修費用も3分の2補助する。補助上限額は、発注システムの場合1000万円、受注システムの場合150万円となる。
日本商工会議所などを通し、中小企業向けの相談窓口を全国2367カ所に設置。軽減税率制度の説明会・講習会も延べ1万回以上開いている。
企業の準備を加速させるため、さらなる周知啓発が求められている。
なお、補助金に関する問い合わせは、軽減税率対策補助金事務局(専用ダイヤル℡0570-081-222、午前9時~午後5時、土日祝日を除く)まで。