ニュース
【主張】自殺の増加 コロナ禍の影響深刻、対策急げ
コロナ禍の収束が見えない中、自ら命を絶つ人が急増している。悩みや困難を抱える人に寄り添い、支える取り組みが急務だ。
自殺者数は年々減少する傾向にあったが、7月以降は4カ月連続で前年の同じ月より増加し、10月は暫定値ながら約4割多い2158人に達した。
憂慮すべきは、女性の自殺が目立つことだ。10月は852人で前年の同じ月より約8割も増えている。
その理由について、厚生労働省の依頼で自殺対策の調査研究を行っている「いのち支える自殺対策推進センター」は、非正規雇用が多い女性はコロナ禍による失業などで経済的に困窮しやすいことに加え、家庭にいる時間が増えたため、DV(配偶者などからの暴力)や育児の悩み、介護疲れなどの問題が深刻化した可能性を指摘する。有名人の自殺報道の影響もあるという。
子どもの自殺が増えている点も看過できない。8月には高校生の自殺が過去5年間で最も多くなった。コロナ禍による学習環境の急変などが背景にあるとみられている。事態は極めて深刻だ。
このため、公明党の自殺防止対策プロジェクトチームは先週、政府に対策の強化に向けた緊急の提言を申し入れた。
提言では、自殺の動向や要因について官民が協力して詳細に分析するよう要請し、電話やSNS(会員制交流サイト)による相談・支援体制の強化を訴えた。
きめ細かい取り組みには一定の時間をかけて現状を分析する必要がある。同時に、今すぐ対応できることに注力することが欠かせない。とりわけSNSは、対面や電話による相談に不慣れな若い世代が活用しやすい。
提言ではさらに、相談員不足に悩むNPOなど民間団体への支援強化や、悩みを抱える女性が安心して立ち寄れる居場所の確保を求めている。政府には迅速に対応してほしい。
自殺の防止には、身近な人の見守りが大切だ。心身ともに疲弊している人は周囲に助けを求められず孤立しやすい。家族や友人、地域住民らが声を掛け、小さな変化も見逃さないようにしたい。