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困窮者に寄り添う 10月施行の改正自立支援法
SOS見逃すな
社会的孤立 対応を強化
行政に制度利用勧める努力義務
生活保護に至る前の困窮者を支援するための「生活困窮者自立支援法」が先の通常国会で改正され、10月から一部を除き施行された。困窮者に寄り添う姿勢を、より明確化するとともに、就労や家計改善に関する支援も充実させる。公明党の主張も反映された改正のポイントを2回に分けて紹介する。
2014年9月、県営住宅の家賃滞納で退去を迫られた母子家庭の母親が、追い詰められて娘を窒息死させた。母親は借金や雇用などで課題を抱えていたが、身近に相談できる人がいなかった。複数の行政窓口を訪れていたが、関係部署間では情報が共有されていなかった――。
こうした事態を二度と招かないよう、自立支援法に基づき15年度から始まった生活困窮者自立支援制度では、福祉事務所を置く自治体に対し、困窮者向けの相談窓口(自立相談支援機関)を必ず設けるよう規定。その上で、地域の実情に応じて就労や家計改善、子どもの学習などに関する支援事業を行うよう定めている。施行後3年間で約68万人が新規で相談を受け、約9万人が就労や収入増を果たした。
この制度をさらに強化するために行われたのが、今回の法改正だ。法律の基本理念や困窮者の定義を改めて明確にした。困窮に至る背景として、他者との接触がほとんどない「社会的孤立」などを明示。孤立している人は病気、失業などの問題が起きると一気に困窮状態に陥りかねないため、早期の予防的な支援を行う方針を打ち出した。行政の関係機関同士や民間団体との緊密な連携も掲げた。
なぜ、こうした規定が設けられたのか。それは、困窮者を支援制度に着実につなげるには、制度で定めている支援事業以外の行政の部局を含む幅広い関係者の協力が必要であり、効果的に支援するためにも理念などの共有が求められるからだ。
これに加え、改正法では二つの具体策も定めた。一つは自治体の福祉、就労などの各部局が困窮者を把握した場合に、支援制度を利用するよう勧める努力義務を創設。二つ目は福祉や教育を含む関係機関が困窮者の情報を共有する「支援会議」の法定化だ。
これらの取り組みにより、困窮者のSOSを見逃さず、行政の縦割りを超えた支援の展開が期待されている。
就労・家計の改善
支援事業の実施促す
自治体への補助拡充、要件も緩和
「ひきこもりが長かったので、すぐには働けない」「家計が常に赤字だ」――。こうした困窮者の悩みに応えるため、生活困窮者自立支援制度では、福祉事務所を置く自治体が国の補助を受けて行える事業として「就労準備支援」や「家計改善支援」を定めている。
就労準備支援とは、生活習慣の改善や就労体験などの支援を行うもの。家計改善支援は、家計表などを使って自力で家計管理できる力を育てるサービスだ。いずれも自立を促す支援策として重要であることから、改正生活困窮者自立支援法では、両事業の実施が自治体の「任意」から「努力義務」に格上げされた。
また、自治体が必ず実施する自立相談支援と、両事業を一体的に行う場合、国の財政支援を拡充する。両事業の実施率は、ともに2017年度で4割程度だったが、国は今後3年間を「集中実施期間」と位置付けた上で、22年度での実施率100%をめざす考えだ。
両事業が各自治体で、より実態に即した形で活用されるようにする取り組みも進む。例えば、厚生労働省は今月から省令を改正し、就労準備支援で規定されている資産・収入要件に関して「世帯全体では収入があっても、本人に収入がない」などのケースを支援対象として明確化した。80代の親が50代のひきこもりの子どもの面倒を見る「8050問題」などを念頭に置いたものだ。
従来も自治体の判断で支援することはできたが、明文上の規定がないことから、支援につながらない場合があった。このため、今年5月の参院厚労委員会で公明党の山本かなえさん(参院選予定候補=比例区)が改善を求めていた。このほか、就労準備支援は「65歳未満」との年齢制限も撤廃された。
公明党は、地域で支え合う「共生社会」の実現に向け、自立支援制度の創設・拡充を後押ししてきた。9月30日に発表した党全国大会の重要政策にも、改正法に基づく施策の推進を掲げており、困窮者支援の一層の充実に取り組む方針だ。