公明党トップ / ニュース / p127937

ニュース

2020年11月11日

東日本大震災 9年8カ月 人間の復興 政策提言へ

全議員で地域課題を検証 
「10年委員会」始動 
党福島県本部

公明党福島県本部(代表=今井久敏県議)はこのほど、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年の節目となる来年3月11日をめざし、国や県に政策提言する「ふくしま復興10年委員会」(委員長=今井県代表)を立ち上げ、活動を開始した。その動きを紹介するとともに、10年委の設置の意義を今井委員長に聞いた。(東日本大震災取材班)

福島第1原発の汚染水を浄化処理する設備を視察する県議ら

10年委では、党県本部の全議員が参加し、復興の現状や震災後の地域課題を洗い出して「ポスト震災社会」のビジョンを検討する。産業や農林水産業、防災・減災などのテーマごとに作業部会を設置し、識者を招いての研修会や現地視察を通じて議論を深化。まとめた提言は、来年3月の党県復興会議で公表する予定だ。

10年委はこれまで、東京電力福島第1原発で発生した汚染水を浄化した「処理水」の処分のあり方や、震災で大切な人や物を失うなどの体験をした子どもへの支援などをテーマに専門家を招き研修会を開催。浜通り地域に新産業を集積する「福島イノベーション・コースト構想」の一環として、政府が整備をめざす国際教育研究拠点の誘致などについては現地視察を行った。

また、県内各地に根差した党の議員ネットワークを最大に生かすため、七つある総支部ごとに地域の特色を出したテーマを設けた。例えば、福島第1原発が立地する双葉、大熊両町など原発事故による帰還困難区域を含む相双総支部では「避難地域の復興・生活再建」を掲げている。

このほか、観光振興、デジタル社会の構築、高齢者の買い物支援などについても、地方創生の観点から幅広く検討する。公明党の山口那津男代表が10月30日の参院代表質問で、福島県を「『デジタル化実証推進県』として先行拠点に位置付けては」と訴えたことも踏まえ、政府が創設をめざすデジタル庁の県内誘致も提言していく方針だ。

原発処理水、心のケアで研修

「原発の廃炉を進める上で処理水の処分が必要だが、国民への説明が不足している」「対応を誤れば風評被害が深刻化する。漁業者ら関係者の努力を無にしないよう十分な対策を」

「グリーフサポート」の講演を聞く10年委のメンバー

9月26日、経済産業省資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策官の木野正登氏を党県本部に招き開いた福島第1原発の処理水に関する勉強会で、10年委のメンバーから鋭い指摘が上がった。

勉強会で木野氏は、同原発の敷地に設置されている処理水の貯蔵タンクが2年後の夏に満杯になってしまうと指摘し、これ以上タンクを増設すると廃炉作業のスペースや資材を置く場所がなくなると説明した。

また、仮にタンクにたまった全処理水を1年で海洋放出や水蒸気放出で処分しても、「影響は自然界から受ける放射線量の1000分の1以下だ」と述べた。

こうした説明に対して参加者からは、地元の理解と国内外への分かりやすい情報発信を求める声が続出。木野氏は、処理水に関する科学的な事実を積極的に広報していくと述べたほか、風評対策を強化する必要があるとの認識を示した。

一方、10年委は10月23日、福島市で福島県立医科大学看護学部講師の佐藤利憲氏から、喪失体験をした人を支える「グリーフサポート」を学んだ。

佐藤氏は、死別などの喪失体験をした子どもが「赤ちゃん返り」をしたり「津波ごっこ」をするといった反応について「悲しみや、つらさ、後悔などのさまざまな思いが湧き起こるのは自然な感情で、それに伴い、泣いたりする行動的反応や不眠などの身体的反応が起きるのは正常なことだ」と説明。「一人一人の声に耳を澄ませ、気持ちや感情に誠実に向き合うことが子ども支援の基本」と訴えた。

また、親と死別する子どもが国内で年間約10万人おり、そのうち自殺で親を亡くした遺児は約1万人に上る現状を紹介し、「地域で寄り添い、支え合う場をつくることが急がれる」と締めくくった。

今後、10年委は11月20日に日本銀行福島支店の植田リサ支店長から「県の経済動向」について、12月に環境省福島地方環境事務所の庄子真憲次長から「福島復興の取り組み」について、それぞれ見解を聞く予定だ。

希望あるビジョン提示

今井久敏 委員長

ふくしま復興10年委員会を立ち上げた背景には、東日本大震災の風化が予想以上の早さで進んでいることへの危機感があります。「1000年に1度」の地震に津波、原発事故という複合災害が時の流れとともに忘れられていく状況を変えるには、被災地の現状を正確に把握した政策提言が必要だと判断しました。

ただ現状を批判するのではなく建設的な提案を示し、県民や被災者が希望を持てるビジョンを作り上げたいと思っています。

福島再生の切り札といわれる「福島イノベーション・コースト構想」は重要な要素の一つです。同構想の司令塔となる「国際教育研究拠点」の創設などで具体案を示したい。産業振興策では、知的財産を使った技術革新の推進を目的とした条例案を県議会に提出することも検討しています。

福島には、再生可能エネルギーから水素を作り出す、「福島水素エネルギー研究フィールド」が立地する浪江町や、デジタル技術を活用したスマートシティー化に取り組む会津若松市など、日本がめざす政策の先進地があります。これらの特長も生かし、被災者の「人間の復興」に寄与するよう精力的に活動します。

「10年委」のメンバー

▽顧問 甚野源次郎党県議長(教育・文化)
▽総合委員長 若松謙維参院議員(デジタル社会)
▽委員長 今井久敏県議(総括・農林水産業)
▽委員長代理 安部泰男県議(原発賠償、廃炉、処理水)
▽副委員長 小島寛子・郡山市議(少子高齢化、人口減少社会、女性活躍)
▽事務局長 伊藤達也県議(産業政策、福島イノベーション・コースト構想)
▽事務局長代理 真山祐一県議(防災・減災)

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

定期購読はこちらから

ソーシャルメディア