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環境対策と経済成長を両立するグリーン社会の実現へ
温室ガス「50年実質ゼロ」めざす
「脱炭素化」世界で加速
社会の脱炭素化と経済成長を両立する「グリーン社会」の実現へ―。臨時国会の所信表明演説で、菅義偉首相は二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」を2050年までに達成する目標を打ち出しました。公明党の主張を反映したもので、日本も各国と同様に気候変動対策を強化する姿勢を鮮明にしました。温室効果ガス排出実質ゼロの仕組みなどを解説するとともに、公明党の取り組みを斉藤鉄夫副代表(元環境相)に聞きました。
温暖化で頻発する異常気象
近年、国内外で地球温暖化の影響とみられる異常気象に見舞われ、パリでは昨年、熱波の影響で42.6度を記録。日本でも大型で猛烈な台風が相次いで襲来するなど、気候変動の脅威が顕在化しています。国連環境計画は、CO2など温室効果ガスの排出量を世界レベルで抑えないと「破壊的な影響」が生じると警告しています。
こうした中、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素化」が注目されています。これは、人為的な排出量から植物による吸収量を差し引いて算出する仕組みで、両者が釣り合った状態を「実質ゼロ」と呼びます【図右】。日本は50年までの実現をめざします。
欧州など先進的な取り組み
世界では、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を15年に採択して以降、脱炭素化への取り組みが加速しています。この協定は世界の気温上昇幅を産業革命前から「2度を十分下回り、できれば1.5度に抑える」ことを目標に据えたものです。
とりわけ先進的なのが欧州です。昨年、他の主要国に先駆けて温室効果ガス排出量を50年までに実質ゼロにする目標を掲げました。また、世界最大のCO2排出国である中国も60年までに実質ゼロをめざす方針を示しています。
新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ社会経済の復興と気候変動対策の両立も新たに求められています。
政府、年内に行動計画を策定
日本は昨年、「パリ協定」を受けた長期戦略を策定し、今世紀後半のできるだけ早い時期に脱炭素社会を実現するとともに、温室効果ガス排出量を50年までに80%削減する方針を掲げていました。
7月に政府は非効率石炭火力発電所を30年度までに段階的に消滅させる方針を決定。これに続く首相決断は、目標の引き上げを意味します。政府は年内に行動計画を策定する予定です。今後の注目は、温室効果ガスの8割を占めるエネルギー分野の見直し。来年のエネルギー基本計画改定へ、現在、30年に22~24%としている再生可能エネルギー(再エネ)の導入目標の見直しが焦点となります【図左】。
公明、首相の決断 後押し
斉藤鉄夫・副代表(元環境相)に聞く
――今回の表明をどう評価しますか。
斉藤鉄夫副代表 重要な決定であり、高く評価しています。今年1月の通常国会の代表質問で、山口那津男代表が具体的に提案していました。
自民、公明両党の新たな連立政権合意でも公明党の強い主張で気候変動対策を加速化させ、脱炭素社会の構築に努める内容を盛り込みました。これらが決断の大きな後押しになったと考えています。
私自身、福田・麻生両内閣で環境相を務め、当時の温室効果ガス排出削減目標の策定に携わっただけに、今回の決定は感慨深いものがあります。
――気候変動問題に対する公明党の取り組みは。
斉藤 公明党は長年、“環境の党”として積極的に取り組み、地球温暖化対策に関する法律の制定や政府への提言を行ってきました。対策の柱となる「太陽光や風力などの再エネの普及」に向けては、技術開発や金融支援を進め、電力の固定価格買い取り制度(FIT)の前身となる「余剰電力買取制度」を創設し、再エネを電力システムの中に組み入れる仕組みを作りました。CO2削減へ毎年7月7日にライトアップ施設の一斉消灯などを行う「クールアース・デー」も公明党の提案によるものです。
再生可能エネルギーの主力電源化を推進
――今後の課題は。
斉藤 まずは、再エネの主力電源化の推進です。今後、石炭火力発電を段階的に縮小させていく中で、日本の電源構成において再エネの比率を大きく増やすことが欠かせません。技術革新による再エネの低コスト化や水素エネルギーの実用化、送電線の増強、蓄電池の開発促進へ大胆な投資を進める必要があります。このほか、温室効果ガスの排出に対して価格を上乗せする「カーボンプライシング」(メモ)の導入へ議論も重要です。
今国会では、「気候非常事態」を宣言する決議の採択に向けて超党派で議論が進められています。世界が直面する危機を国会、国民全体の意識として共有するべく、公明党がリードしていきます。
国連総長やEUが歓迎
「50年実質ゼロ」の目標について、国連のグテレス事務総長は菅首相との電話会談で、「果断な決断を歓迎し、高く評価する」と支持を表明。欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、「心から歓迎する。気候変動を止めるために全ての先進国が設定すべき目標だ」とツイッターに投稿しました。
カーボンプライシング
温室効果ガスの排出を抑えるために、排出に税金をかける「炭素税」と、定められた排出枠を超えた国(企業)と超えていない国(企業)とで売買する「排出権(量)取引」などがある。途上国の排出削減を支援して自国の削減分に充当するケースも想定される。