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議論進む「少人数学級」
文科省が来年度予算概算要求に盛り込む
公明、政府に要請
ポストコロナ時代における、新たな学びのあり方を巡る議論が活発になっている。公明党が長年訴えてきた少人数学級にも、注目が集まり、文部科学省は来年度予算の概算要求の中で実現に向けた整備費を盛り込んだ。こうした中、公明党の教育改革推進本部と文部科学部会は9日、加藤勝信官房長官に対し、小中学校の1クラス30人以下の少人数学級の推進や特別支援教育の改善を求める同本部と同部会の「決議」を手渡した。決議の内容を解説するとともに、党文科部会長の浮島智子衆院議員に、その意義を聞いた。
加藤官房長官(右から3人目)に決議を手渡す公明議員=9日 首相官邸
学校の福祉的な役割に
コロナ禍で改めて注目が
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの小中学校が今年3月から5月末まで休校となった。それを契機に、ポストコロナ時代の新たな教育のあり方を考える議論が起こった。
特に学校の役割について、教科教育の場としてだけでなく、子どもの居場所であり、健やかな成長を促す場であると、改めて指摘されるようになった。
休校期間中の4月27日にオンラインで開かれた、中央教育審議会の初等教育分科会では、委員から「学校は狭い意味での『教育』に留まらない『福祉』的な価値(例えば健康的な生活リズム、子どもの安全な居場所等)も担っていることが如実に浮き彫りになってきた」など、休校を機に学校の福祉的な役割に注目する意見が多く出された。
その後、学校は再開したものの、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン授業や、感染拡大防止へ「3密」を避けるための学校運営が徹底された。
そうした中で、議論が進み始めたのが、感染防止にも有効で、きめ細かな指導も可能とする30人以下の少人数制学級の実現だ。
現在、小中学校の学級編成は、40人(小学1年は35人)が標準になっている。
コロナ禍で、改めて学校の福祉的な役割が注目され、さらにICTの活用などの観点からも少人数学級を実現させようとの動きが出てきた。
子どもの多様性に応じた
きめ細かな教育を実現へ
公明党は長年、多様な時代の変化に即した新しい教育を実現することを訴え続けてきた。
今回の決議では、これまでも公明党が少人数学級を推進するとともに、小学校専科教育、特別支援教育、いじめ問題、学校の組織運営の改善などの教育課題に対応するため、教職員定数の充実を強く求めてきた経緯に言及。
また、「GIGAスクール構想」の下、1人が1台持つようになる端末の効果的な活用などを進め、子どもたちの特性や学習状況、家庭環境に応じたきめ細かな教育を推進する必要があることも強調した。
さらに、新型コロナ対応を踏まえ、災害を含めた緊急事態においても、子どもの学びの機会を確保できる環境も整備すべきだともしている。
決議は、こうした論点を踏まえ、30人以下の少人数学級を実現するよう政府に要請した。
具体的には、現在の教職員定数の計画は、少子化に伴う子どもの自然減に合わせ、機械的に減らしていく仕組みになっているが、それを「教職員定数の計画的な改善」に変えるよう訴えた。
少人数学級を実現するための財政措置についても、来年度予算に盛り込むよう強く要望した。
特別支援教育へも対応必要
決議では、特別支援教育の改善についても、政府に対応を求めている。
特別支援学級や、普通学級に通いながら別室で障がいの度合いに応じた支援を受ける「通級」による指導を受ける子どもは、年々増え続けている。
2008年に約12万人だった特別支援学級の在籍者数は約2倍に増え、18年には約25万人となり、通級指導を受ける児童・生徒数も同様の傾向となっている。
こうした実態を踏まえ、決議では、特別支援学級や通級による指導の運営指針を具体的に示すなど、必要な改善策に取り組んでいくよう訴えた。
教職員の大量採用なしに「30人以下」は可能
党文科部会長 浮島智子 衆院議員
学校現場には、不登校やいじめ、子どもの学力格差、特別に支援が必要な子どもたちの増加など課題は山積しています。
これまで公明党にも、多様な個性を持った子ども一人一人に丁寧な指導を行うには、現行の40人学級では大き過ぎるという声が寄せられていました。
そうした声を踏まえ、公明党は一貫して少人数学級を推進し、そのための教職員定数の改善なども進めてきました。
コロナ禍で学校の役割が注目される中にあって、公明党としても、約30年間見直されてこなかった公立小中学校の学級編成の標準を引き下げ、今こそ少人数学級を推進する時だと考えています。
少子化の時代、計画的に教職員定数を配置していけば、新たに大量に採用せずとも、教職員の質を確保しつつ30人以下の少人数学級を実施することは十分に可能です。
合意形成を進め、実現可能な少人数学級を訴えているのは公明党です。子どもたちの可能性を最大限に引き出す教育のため、引き続き、公明党として訴えていきます。