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不妊治療 現状と課題
体外受精での出生が最多
費用総額 300万円超のケースも
晩婚化などで不妊に悩む男女が増え、5.5組に1組の夫婦が経験しているといわれる不妊治療。菅義偉首相が先月の就任会見で保険適用の拡大を表明したことを受け、経済面など治療を受ける人の負担の大きさに注目が集まっている。現状を解説するとともに、支援活動を行うNPO法人Fineの松本亜樹子理事長に課題を聞いた。
日本産科婦人科学会の調査によれば、2018年に不妊治療の一つである体外受精で生まれた子どもは5万6979人で過去最多。同年の出生数は91万8400人で、約16人に1人が体外受精で生まれたことになる。治療件数も45万4893件で過去最多を更新している。
不妊治療の一般的な流れは、まず男女とも血液や超音波で不妊の原因を調べる検査を行う。その結果、精管閉塞(男性)や子宮内膜症(女性)といった病気が見つかった場合は、手術や薬で治療する。
そうでない場合は、受精を補助する治療を段階的に実施する。最初は、排卵日を予測し性交渉のタイミングを指導する「タイミング法」。次に精液を直接子宮に注入する「人工授精」。それでも不妊が続く場合は、精子と卵子を体外で受精させて子宮に戻す「体外受精」を行う。
このうち、保険適用の対象は検査と病気の治療、タイミング法まで【表参照】。保険が適用されない人工授精にかかる費用の目安は1回(1周期)の治療で1万~5万円、体外受精は30万~100万円超と高額だ。何度も繰り返し、さらに負担が重くなる場合もある。
体外受精や、その一種で卵子に精子を直接注入する顕微授精などは国の助成対象となっているが、夫婦で年730万円未満の所得制限や治療開始時の妻の年齢が43歳未満との条件(新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえ、現在は一時的に緩和)があり、助成を受けられないケースも多い。
NPO法人Fineが実施した18年の調査では、治療費の総額は、「100万~200万円未満」との回答が最も多く、300万円以上払っている人も増加傾向だった。
また、若い世代ほど経済的な理由で治療を断念していることが明らかになっている。
仕事との両立も大きな課題だ。特に女性の場合は、卵子の状態を確認するため頻繁に通院する必要があり、仕事の調整が難しい。仕事を続けられないと収入減で治療の選択肢が狭まり、仕事を優先すると治療が進まないという板挟み状態に陥りやすい。
公明、国と地方で支援拡充を後押し
公明党は1998年以降、国会や地方議会で不妊治療への保険適用を訴え、全国で署名活動を展開してきた。国の助成制度が2004年度に開始された以降も、助成金の増額や所得制限の緩和など段階的な拡充を後押し。各地で自治体独自の上乗せも実現している。
9月30日には、政務調査会に不妊治療の保険適用や助成制度のさらなる拡充などに取り組む新たなプロジェクトチームを設置した。
身体や精神、経済面の負担軽減へ法整備早く
NPO法人Fine・松本亜樹子 理事長
不妊治療を受ける人が抱えるさまざまな不安の中で、経済的負担のウエートは非常に大きい。費用が不足して治療を諦める人もかなり多いのではないか。保険適用の範囲が拡大するとすれば、大変ありがたいことだ。
体外受精や顕微授精は自由診療のため、高額な上に医療機関によって費用が異なる。人工授精は高くて5万円程度だが助成対象にも入っておらず、繰り返すことでかなり負担は重くなる。
不妊治療は一人一人に最適な形で実施することが大事だ。保険適用の拡大に当たっては、治療を受ける人の選択肢を狭めることがないよう十分に配慮してほしい。
その上で、いま懸念していることは、経済的負担にばかり注目が集まり、当事者の身体的負担や精神的負担、時間的負担といった山積するその他の課題が解決されないまま取り残されることだ。
例えば、各医療機関における治療件数や妊娠・出産率などの情報が開示されておらず、病院を選ぶ基準がない。治療を受ける人の多くは、口コミやホームページの印象などでなんとなく病院を決めているのが実態だ。
私たちが今年実施した調査では、5000人以上の不妊治療経験者・予定者の約8割が病院選びに迷った経験があると回答した。自分に合わない治療を受け、何年も通ってから転院を繰り返している。こんな不毛なことはない。
そもそも最大の課題は不妊治療が法制化されていないことだ。そのためガイドラインがなく、医療機関は情報開示の義務もない。海外で第三者から提供された精子を使った治療でトラブルも発生している。治療を受ける人と生まれてくる子どもを守るためにも法整備を進めてほしい。











