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コラム「北斗七星」
「人間の運転能力を完全に再現することは不可能」と語るのは、自動運転バスを開発する埼玉工業大学の渡部大志教授。そこに搭載される人工知能(AI)の最大の課題は「空気が読めない」ことだとも(8月6日付 読売夕刊)◆脳科学者の茂木健一郎氏は近著『クオリアと人工意識』で、AIは「『正解』が決まっている『クイズ』は得意なのに、楽しい『雑談』をするのが苦手」と説く。人は「会話を交わすことで、相手の覚醒状態の『いきいき』や、思考や感性のしなやかさ、柔軟さを認知することができる」が、AIは「その本質をとらえることはできない」と◆AIでは会話の機微や本質をつかめないということか。店舗での接客や、行政の相談業務への活用例も見られるが、“空気”を読めないAIには限界がある◆公明議員の活動は「一人一人と直接会って、励まし、切実な声に耳を傾ける『1対1の対話運動』が基本」(斉藤鉄夫幹事長=9月12日付本紙)で、今は直接会うことが難しければ、電話やオンライン通話などもある◆茂木氏は同著で、AIに象徴される科学や技術の方向性に流され、「人間」から離れてしまう「遠心力」に抗して、「人間そのものへの『求心力』を打ち立てなければならない」と訴える。AIも良いが、まずは「人間」ならではの対話からだ。(三)