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2020年9月13日

コロナ禍と教育格差

潮流2020 
データによる実態把握急げ 
早稲田大学准教授 松岡亮二

「教育格差」とは子ども本人が選んだわけではない「生まれ」によって学力や学歴のような成果に差があることを意味する。主な「生まれ」の一つは出身家庭の経済的、文化的、社会的な特性を統合した概念である社会経済的地位(Socioeconomic status、以下SES)である。「教育格差」は2000年代以降メディアや政策議論で取り上げられるようになったが、データは、程度の差こそあれ、いつの時代も高SES家庭出身者が大卒になる傾向を示している。戦後日本は出身家庭のSESによって人生の可能性が大きく制限された「教育格差社会」なのだ。

拙著『教育格差』(ちくま新書)にさまざまなデータを示したように、高SES家庭出身の子どもは小学校の時点ですでに学力が高い傾向にある。このSESによる学力格差は義務教育の小中学校の期間に大きく拡大はしないが縮小もしない。「生まれ」による「格差の平行推移」といえる実態がある。このようにコロナ禍前から学力格差は存在していたが、一斉休校期間中、家庭のSESによって通塾を含む時間の使い方などに違いがあったことで、格差は平行推移ではなく拡大した可能性がある。また、今後、親の収入低下や失職などを背景に進学を諦める低SES層も増加し得る。

では私たちには何ができるのだろうか。病状を適切に診断せずに意味のある治療法の選択ができないように、教育手法や政策を議論する前に、データによる多角的な現状把握が必須である。こんな当たり前の論点を強調しなければならないほど、日本の教育行政はデータによる現状把握を怠ってきた。事実、一斉休校中の実態について踏み込んだ調査を行った自治体は、都道府県レベルでは、埼玉、福岡、千葉、兵庫県など数少ない(調査範囲に政令市は含まれず)。

多角的に現状を診断しなければ効果的な対策を練ることはできないし、後に政策の影響を明らかにすることもできない。日本の教育行政はコロナ禍という未曽有の危機に直面してもなお、データで現状把握をせずに授業時間の確保など効果が不明な、その場しのぎを繰り返している。そもそも義務教育で全員に対して「同じ扱い」をするだけでは小学校時点で存在するSESによる格差は平行推移となり、縮小できない。

一人でも多くの子どもたちの可能性を最大限に開花させたいのであれば、まず、データで実態を継続的に把握すべきである。具体的には、文部科学省、各自治体の教育委員会、そして学校現場が協働し、児童生徒、学校、自治体それぞれに固有の識別番号を割り当て、分析可能にすべきだ。その上で、「格差の平行推移」という実態に対して介入策を打ち、その効果を検証し、より意味のある施策のために微修正を繰り返すサイクルを確立することで、実際に低SES層の学力向上などの結果を出すべきである。

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