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「風評」と闘う~福島漁業は今~(中)
東日本大震災9年6カ月
「常磐もの」各地の食卓へ
流通大手、生きの良さや味をPR
絶対伝わる
カレイやシラス、ノドグロにホウボウ……。都内のスーパーの一角に色鮮やかな大漁旗が掲げられ、「常磐もの」と呼ばれる福島県の海の幸がずらりと並ぶ。販売コーナーでは、専属スタッフが接客に汗を流し、生きの良さや旬な魚の調理法をPRしている。「新鮮なお魚ですよ、どうぞお立ち寄りくださいね」――。
「福島鮮魚便」と銘打たれたこの取り組みは、福島県と福島県漁業協同組合連合会(県漁連)、流通大手のイオンリテール(本社・千葉市)の3者がタッグを組み、2018年から首都圏で展開。いわき市の小名浜漁港や相馬市の松川浦漁港で水揚げされた水産物を直送し、販売している。
買い物客からの評判も良く、18年の5店舗から、19年は10店舗に、3年目の今年は東京都、埼玉、群馬、宮城各県の13店舗へ拡大。愛知県と大阪府の各1店でも毎月1回、週末に特設売り場を置き、好評だ。「常磐もの」が各地の食卓へ広がっている。
「『常磐もの』のおいしさと安全性を知ってもらえれば、絶対に価値が伝わると考えて取り組みを進めてきた」。同社の担当者は、手応えを語る。
対面に活路
東京電力福島第1原発事故の後、福島沿岸で魚種や海域を絞った「試験操業」が始まったのは、12年6月。県漁連は水揚げ後の放射性物質検査で、国の基準値(1キログラム当たりの放射性セシウム100ベクレル以下)より厳しい独自基準(同50ベクレル以下)を設定し、安全管理に力を注いだ。
それでも、風評は根深い。一度失った商品棚を回復することも難しく、流通は県内に限られた。県水産課によれば、原発事故から6年になった17年も「県外の量販店での取り扱いはゼロだった」という。
県は専門家の助言も受け、「常磐もの」の魅力をはじめ、検査体制や安全性を買い物客に直接伝えられる「対面販売」で活路を開けないかと模索。そんな矢先、イオンリテールが協力を快諾、復興庁の支援も得て、研修を受けたスタッフが鮮魚コーナーに立つ形が具体化した。
対面による販売は、想定以上の効果を生んだ。「なんとなく怖いから買わない」という人も少なくない中、品質の良さや安全性に自信を持ってアピールすることで、各店の売り上げ目標をおおむね達成。今では、福島水産物への懸念の声はほとんど聞かれなくなった。
イオンリテールの担当者は「風評は全くゼロになるわけではないと思うが、確実に風評被害は減ってきている。今後も福島県の漁業復興を後押ししていければ」と話している。









