ニュース
風疹患者、急速に拡大
妊婦への感染に注意を
風疹の患者数が急速に拡大している。国立感染症研究所によると、患者数は今月16日までの1週間で新たに127人報告され【グラフ(1)参照】、今年の累積患者数が642人に達した。これは、昨年1年間の6.9倍に上る。風疹のもたらす影響や感染防止への取り組みについて、同研究所や厚生労働省の見解を基に解説する。
【上=グラフ②】風疹の免疫を持っている割合、【下=イラスト】風疹を含むワクチンの定期予防接種制度
生まれた赤ちゃんに難聴や白内障、心疾患の恐れ
風疹は、風疹ウイルスの感染によって起こる病気で、感染者の咳、くしゃみ、会話などでウイルスを含んだ飛沫(唾液のしぶき)が飛び散り、鼻や口から吸い込むことで感染する。感染力は、インフルエンザより強いとされている。一度感染すると抗体ができるので、大部分の人はその後、風疹にかかることはない。
ウイルスに感染すると、平均16~18日間程度の潜伏期間を経て発症する。主な症状は発疹や発熱、耳の後ろや後頭部のリンパ節の腫れなど。子どもの場合、症状は比較的軽いものの、まれに脳炎といった重い合併症を引き起こすこともある。大人は症状が長く、関節痛がひどくなることが多い。
一方、感染しても15~30%程度の人は、明らかな症状が現れずに抗体ができる「不顕性感染」になる。ただし、不顕性感染の場合でも、知らずに周囲に感染を広げてしまうケースがある。
とりわけ注意したいのが、妊娠初期(20週ごろ)の女性である。風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴や白内障、心臓の病気などを持った「先天性風疹症候群(CRS)」を発症する恐れがあるからだ。2012~13年にかけて患者数が1万6000人を超えて大流行した際は、45人の赤ちゃんがCRSと診断され、死者も出た。
こうした中、今年も風疹の感染が急増している。現在は、首都圏の患者が大部分を占めているが、同研究所は今後、全国に広がる可能性もあると見ている。日本産婦人科医会は「13年の大流行の前兆に類似した状況」と指摘しており、厳重な警戒が欠かせない。
ワクチン接種、予防に有効/免疫持つ割合、30~50歳代の男性少なく
風疹の感染を防ぐには、風疹含有ワクチン(風疹ワクチンと麻疹風疹混合ワクチン)を接種することが最も有効とされ、2回の接種が望まれている。接種費用を助成している自治体もある。
ただ、妊娠している人はワクチンを接種できない。流行時は外出を避け、人混みに近づかないようにするなど注意が重要だ。またワクチン接種後2カ月は、妊娠しないようにしなければならない。
同研究所の「感染症発生動向調査」によると、13年の男性の風疹患者数は、女性の約3倍を記録した。特に、妊婦への感染経路は夫から妻の場合が最も多く、CRSを防ぐには、家庭や職場での予防への取り組みが不可欠だ。今年も患者の9割は成人が占め、男性が女性の4倍以上。特に、30~50歳代が多い。
その背景には、30~50歳代の男性で風疹の免疫を持つ割合が少なく、大きな問題となっている【グラフ(2)参照】。風疹を含むワクチンの定期予防接種制度の変遷【イラスト参照】によって、予防接種を受けていない人が数多くいるためで、30~50歳代で風疹の免疫がない男性は、数百万人にも上るとされる。成人男性に予防接種を推進する取り組みがカギを握る。
過去に予防接種を受けたかなど、風疹ウイルスの免疫があるかどうかが不明の場合、医療機関で抗体検査を受けることができる。また、仮に過去に予防接種を受けていたり、風疹にかかっていたりしても、再び予防接種を受けることによる副反応が起こることはなく、さらに免疫を強化する効果も期待される。
同研究所・感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長は、「妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、胎児に影響が及ぶ可能性が高い」と強調する。
その上で、妊娠中に風疹の症状が出た場合、CRSの頻度は、妊娠1カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度である点を指摘。「多くの女性が妊娠に気付くのは2カ月を過ぎてから。妊娠前に、子どもの頃を含めて2回の予防接種を行うことが大切だ」と話している。
公明が早期収束へ対策要望
政府は、20年までに国内の風疹をなくす目標を掲げている。感染の流行は数年間続くこともある。東京五輪・パラリンピックまで流行が続けば、訪日外国人の減少にもつながりかねず、大会への影響が懸念されている。
実際、13年の流行時には、米国の疾病予防管理センターが、予防策が十分でない妊婦に対して日本への渡航を避けるよう呼び掛けた事例もあった。流行の早期収束へ政府を挙げた対策が求められる。
公明党の厚生労働部会(桝屋敬悟部会長=衆院議員)は今月6日、厚労省に対して、自治体でワクチン接種費の助成などを求める声が上がっていることを踏まえ、各地域の実情や要望に丁寧に対応するよう要請している。










