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コロナ禍で増加 心の病に身近な人の支援
専門家につなぐ応急処置
メンタルヘルス・ファーストエイド
浸透は不十分 教育現場などで周知を
“コロナうつ”という言葉が生まれるなど、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活の変化によって、心の病を抱える人が増加している。こうした中で、家族や友人などの身近な人が行える「メンタルヘルス・ファーストエイド」(MHFA)という支援に注目が集まっている。普及に向けた課題を探った。
MHFAは、心の病に対する「応急処置」や「初期対応」を意味する。うつ病などの精神疾患を抱える人に対して、専門家ではない身近な人ができる支援プログラムだ。
①自傷・他害のリスク評価②はんだん(判断)、批判せずに話を聞く③あんしんと情報を与える④専門家のサポートを勧める⑤自分でできる対処法(セルフヘルプ)を勧める――の五つの行動計画で構成され、「りはあさる(リハーサル)」と覚えられる。
最も重要度の高い、自殺の意思などを確認するリスク評価に加え、責めたり決め付けたりせず、相手の話をしっかり聞くこと。適切な治療で良くなるなどの情報を与え、医療機関への受診を促すこと。軽い運動など、症状を緩和する対処法を示すことなど、専門家の支援につなげるための具体的な対応を学ぶことができる。
MHFAは、2000年にオーストラリアで開発され、日本でも、東日本大震災における被災者支援やひきこもり対策など、心の健康に関するさまざまな場面で活用されている。
自殺のサインに気付き、適切な対応を図る「ゲートキーパー」もその一つだ。NPO法人ゲートキーパー支援センターの竹内志津香理事長は、支援の現場においてMHFAは必要不可欠なものだと語る。
例えば、うつ病の患者の家族であっても、判断、批判せずに話を聞くということができず、患者を追い込んでしまうケースがある。また、精神疾患を抱える患者に自殺の意思などを尋ねることは、死にたいという思いを和らげるために大切なことだが、必要性を知らない人にとっては抵抗がある。竹内理事長は、「身近な人が悩んでいても、(MHFAの)スキルや知識を学んでいない人は、適切な支援ができていない」と指摘する。
MHFAの普及を進めているメンタルヘルス・ファーストエイド・ジャパンの大塚耕太郎代表は、保健師や民生委員など、特定の職種や分野では活用が進んでいるものの、社会への浸透が不十分だと強調する。
大塚代表は、教育現場での活用など、国民一人一人への周知・啓発が不可欠とした上で、「コロナ禍で家族や身近な人と過ごす時間が増える今こそ、MHFAの重要性が増している」と語る。
相談件数、2カ月で1万件
全国の都道府県・政令市の精神保健福祉センターに寄せられた新型コロナウイルスに関する心の相談件数は、緊急事態宣言が発令された4~5月の2カ月間で大幅に増え、1万件近くに上った。
東京都にある相談窓口の一つ、中部総合精神保健福祉センターによると、感染拡大の初期は、感染への不安や生活の乱れによる不眠などの相談が多かったという。現在は、件数が減少したものの、他人との関わりが薄れたことによる孤独感や、将来への不安を吐露する内容は増加傾向にある。
また、ニッセイ基礎研究所が6月26~29日に実施した「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」では、他人との「交際や付き合い(オンラインを含む)」が減ったという人が5割に上る一方で、3割の人が「家族と過ごす時間が増加した」、2割の人が「一人で過ごす時間が増加した」と回答している。
国民の命守る政策進める
公明党うつ対策プロジェクトチーム 三浦信祐 事務局長(参院議員)
日本のうつ病患者数は約127万人(17年現在)と増加傾向にあり、自殺の原因としても最も高い割合を占めている。
公明党はこれまで、うつ病対策を極めて重要な政策課題と位置づけ、有効な治療法の一つである「認知行動療法」の保険適用などを実現してきた。今年2月には、それまでのワーキングチームから体制を拡充した党うつ対策プロジェクトチームを設立し、専門家へのヒアリングや医療機関への視察などを精力的に行っている。
うつ病は誰もがなり得る病気であり、メンタルヘルス・ファーストエイドのような身近な人ができる支援を広げていくことは重要だ。
新型コロナの影響が長期化する中、国民の命を守る政策として、うつ病対策を進めていきたい。











