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【主張】日中インフラ協力 途上国の援助にルール作りを
日本と中国の経済協力が今、急速に進んでいる。
中でも注目されているのは、途上国や新興国といった第三国で、道路や鉄道、港湾などのインフラ(社会資本)整備を日中の企業が行う協力関係の構築に向けて、動き出していることである。5月の安倍晋三首相と中国の李克強首相との会談での合意を踏まえ、検討が始まった。
その実現に向けた具体的な方策を話し合う、両国の官民合同委員会の初会合が、今月25日に北京で開かれた。タイ政府の、主要3空港を結ぶ高速鉄道の建設計画を柱とした「東部経済回廊(EEC)開発構想」のインフラ整備で、日中の企業が協力できないかなどを議論したという。
現在、海外のインフラ需要は急激に拡大しており、ここでの日中の協力関係の構築は大きな意義がある。
例えば、アジア開発銀行(ADB)によると、2016~30年のアジア太平洋地域における途上国のインフラ需要は、総額で26兆ドル(約2900兆円)と規模が大きい。
だからこそ、日本は、自国の優れたインフラシステムの輸出を成長戦略の柱の一つとしている。
中国も「一帯一路」構想を掲げる。インフラ整備を進めることにより、アジアや中東、アフリカなどの国々との結び付きを強めることで貿易や投資を活発化し、巨大な経済圏を創出するというものだ。
しかし、中国のインフラ投資は、対象国の返済能力に配慮していないことがあり、過剰な債務負担をもたらすケースも見られる。
スリランカのハンバントタ港は中国の援助で開発されたが、高利のためスリランカ政府が返済不能に陥った。また、マレーシア政府は中国企業が関わる大型鉄道事業の中止を決めたほか、事業計画を見直す国が相次いでいる。
日本など経済協力開発機構(OECD)加盟国は、途上国の経済発展と福祉の向上に資する援助を実施するため、OECDの評価基準に従っているが、中国はOECDに未加盟である。日本は中国と協議し、援助を受ける国から信頼される共通のルール作りを進めるべきだ。日中の協力は、途上国の繁栄につながるものでなければならない。