ニュース
【主張】武器貿易条約 テロ集団などへの流用防止を
戦車や戦闘機、軍艦のような重兵器に加え、拳銃や自動小銃といった小型武器などを含む通常兵器の輸出入や仲介取引などの移転を規制する武器貿易条約(ATT)。
移転先で大量虐殺などに使われることがあらかじめ分かっている場合、通常兵器の移転を許可しないよう締約国に義務付けており、紛争の助長や悪化を防ぐという観点からも非常に重要な条約だ。
その運用状況を見直す第6回締約国会議が、今月17日から21日までの日程で開催された。会議の主要な議題は「透明性と情報交換」である。
ATTは締約国に対し、武器の輸出入に関する報告書を条約事務局に毎年提出するよう求めている。これにより、各締約国がどの国に、どういう種類の通常兵器を、どれだけの量輸出したのかなどの情報の取得が期待できる。
ところが、報告書を提出している締約国は少ない。ATT締約国は110カ国を数えるが、昨年、報告書を提出した国は51カ国にとどまる。日本は毎年提出している。
また、ATTは、商業上機微な情報や、国家の安全保障に関する情報を報告書から除外できるとしている。除外してよい情報に該当するかどうかの判断は、締約国の裁量に委ねられているため、武器の輸出入についてATTの義務を果たしているのか検証するために必要な情報が、報告されていない可能性もある。
今回の会議では、この課題についての議論を継続するとしている。ATTの実効性を高めるためにも、報告書から得られる情報の透明性を確保すべきだ。
一方、今回の会議では「流用情報交換フォーラム」を設立することで合意した。合法的な武器貿易で取引されたはずの通常兵器が、いつの間にか犯罪集団やテロリストの手に渡るという流用を防止するために不可欠な仕組みだ。
国連によると、世界中に流通している数億もの通常兵器の3分の2は、各国の政府軍や警察以外の人たちの手に渡っており、紛争の長期化などの事態を招いているという。だからこそ、流用の実態を把握することが求められる。
武器の移転に関して厳格なルールを実施している日本の役割も一層重要になる。