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【主張】ストーカー規制 GPS悪用した手口に対策を
ストーカー被害の実態に即した手だてを急ぎたい。
衛星利用測位システム(GPS)を相手の車に無断で取り付けて位置情報を得る行為が、ストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるのか。これが争点となった2件の刑事裁判について、最高裁は先月、見張りに当たらないとの初判断を示した。
規制法は、相手の住居や勤務先など「通常所在する場所の付近で」見張ることを禁じている。
最高裁は、この「見張り」に該当するには「機器を用いる場合でも、相手の住居などの付近という一定の場所で、その相手の動静を観察する行為が必要」と解釈。GPSで離れた場所から位置情報を得る行為は、この要件を満たさないため、処罰対象とはならないとした。法に規定のない刑罰は科さない「罪刑法定主義」に基づいた結論で、受け止めなければならない。
しかし、近年は通信技術が進歩し、小型のGPS機器が容易に入手できるようになった。同様の被害はほかにも相次いでおり、居場所が特定されて殺傷事件につながるケースもあった。
そこまで深刻化せずとも、被害者にとってみれば、GPSで居場所を把握されること自体が大変な恐怖であろう。プライバシーが侵害されているという不安も尋常ではないはずだ。
警察庁によると、GPSによる監視を「見張り」として摘発した事例は、これまで59件に上っている。だが、最高裁は今回、規制法違反に該当しないとの判断を示した。今後の取り締まりへの影響が懸念される。
このため、公明党のストーカー・DV・性暴力等対策推進プロジェクトチームが20日に開いた会合で、山本香苗座長(参院議員)は「時代に合った必要な法改正を検討したい」と強調。警察庁に対し、都道府県警と連携して巧妙化する手口の実態を調査するとともに、有識者の意見を聴く場を設けるよう要請した。
ストーカー被害の相談件数は、7年連続で2万人を上回って高止まりしている。被害者保護の視点に立ち、悲劇を未然に防ぐため、法改正を含めた対策の強化に取り組むべきである。