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コラム「北斗七星」
「幾山河越えさり行かば寂しさの 終てなむ国ぞ今日も旅ゆく」――戦前を代表する歌人、若山牧水の作。牧水は旅と酒をこよなく愛した歌人で、全国に約300の歌碑が建てられている◆鉄道と文学をテーマに旅を続けたエッセイストの佐藤喜一さんは、かつて本紙の文化欄で「幾山河~」の歌を取り上げたことがある。牧水が学生時代に、岡山・広島県境の二本松峠で詠んだ歌で、ここに歌碑が建立されていると紹介。さらに、近くを走るJR芸備線の便が悪く「一度出かけてみたいと思いつつ、果たしていない」とも記していた◆芸備線は岡山県新見市と広島市を結ぶローカル線だが、運行本数が少ないだけでなく、自然災害による被害も目立つ。一昨年の「西日本豪雨」では全線復旧まで1年以上かかり、今年の「7月豪雨」でも1カ月間不通になった◆近年、豪雨や地震など度重なる自然災害が、鉄道にも甚大な爪痕を残している。7月豪雨で特に被害の大きかった九州では、鉄橋の流失などにより、今もJRと第三セクターの計4路線に不通区間が残り、多くは復旧のめどが立たない◆鉄道は地域を支える重要な生活の足だ。地域の鉄路をよみがえらせるためには官民挙げての支援が必要だ。そして単なる復旧にとどまらず、災害に強い路線としての再生が望まれる。(千)