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コラム「北斗七星」
「終戦直前、母親と船に乗って鉄の赤さびだらけになって本土に帰ることができました」。宮城県気仙沼市のカキ漁師、畠山重篤さん(76)から伺った。75年前、畠山さん親子は、上海から鉄鉱石運搬船で下関に上陸し、気仙沼へと帰った。終戦後、帰還した父親が一家を養うためにカキ養殖を始めたという◆気仙沼湾は高度経済成長期、流入する大川の流域が乱開発され、赤潮が多発。養殖ノリは白くなり、カキが赤く染まった。畠山さんは、仲間の漁師たちと「森と川の自然を取り戻せば、海もよみがえる」と源流のある室根山でブナなど広葉樹を植える「森は海の恋人」運動を始めた。やがて赤潮は消え、青い海が戻った◆森の腐葉土の養分が川に運ばれ、海の植物プランクトンが成長。それを食べる貝や魚が育つ豊かな海をつくる。植物プランクトンの生育に欠かせないのが鉄だという畠山さんは「引き揚げの時から私は鉄との縁が深いようです」と述懐する◆東日本大震災では大津波で養殖施設を流され、母親の小雪さんを失った。畠山さんから全てを奪った気仙沼の海は、すぐに魚影が戻り、豊かな幸をもたらした◆畠山さんは自著『汽水の匂いに包まれて』につづっている。<川の流域の森林と環境を守れば、豊かな海が約束されている>。まさに森は海の恋人だ。(川)









