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2020年8月9日

次代につなぐ あの日の記憶

原爆投下75年 ナガサキ 
曽祖母から4人のひ孫へ 被爆体験伝え残す 
長崎市 田崎ツヤ子さん(92歳)

広島、長崎に原爆が投下されて75年。きょう9日は長崎で「原爆の日」を迎えました。被爆者の高齢化が進む一方で、被爆体験や核廃絶の願いを次代に継ぐ“歩み”は着実に前へ進んでいます。一つの家族や平和活動に携わる青年の姿を追いました。

田崎家はいつもにぎやか。ツヤ子さん(右端)、富茂さん(左隣)、映子さん(左から2人目)と、ひ孫たち

家の中を走り回る子どもたちの楽しそうな声が響いていました。長崎市横尾に住む田崎ツヤ子さん(92)一家です。ツヤ子さんの長男・富茂さん(67)、照子さん(66)夫妻と、孫の正則さん(40)、映子さん(42)夫妻、そして、ひ孫4人の9人が一緒に暮らしています。

75年前のきょう、17歳だったツヤ子さんは自宅近くの知人の家にいました。空が突然「ピカッ」と光ったのはその時です。爆心地から約2キロ地点での被爆でした。直後のことは覚えていませんが、幸いけがはなく、翌日、自宅を見に行くと梁が落ちて住めない状態でした。父と再会できた喜び、死体があふれる町の惨状、恐怖の中で必死に生き抜いたことが、心に深く焼き付いています。

被爆から約3年後、ツヤ子さんは結婚し、女の子を授かりましたが、すぐに亡くなりました。「原爆の影響か……」との不安に襲われましたが、因果関係は分かりません。言葉にできぬ悲しみに耐え、前を向いたツヤ子さん。その後、元気な男の子2人が生まれたのです。一時は「女の子に恵まれない家系では」と心配しましたが、ひ孫のうち3人は女の子。あの時の心配は、ひ孫たちの笑顔でかき消されました。

節目の年、映像で家族と証言共有

ツヤ子さんは被爆体験を何度か周囲に語ったことがあります。25年前、NGO(非政府組織)の活動の一環で、証言を映像として残す取り組みに協力したことがありました。この映像は75年の節目の今年、DVDとして国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館に寄贈されました。積極的に聞かれない限り、家族にも自身の体験を多くは語りませんが、DVDには「子どもたちの笑顔が、大人になったその先の未来まで輝くように――」とのツヤ子さんの強い願いが込められています。

「家族そろって体験を見ることができました。孫たちが大きくなる頃にも残していけます。母や関係者に感謝したい」と富茂さん。親子4代の笑顔は、ひいおばあちゃんが注ぎ続けてくれた慈愛であふれていました。

核廃絶へ機運を高めたい
若い視点で語る場 広げる

コロナ禍でも同世代と平和について語り合う場をつくる中島さん

若者の力で平和活動を推進する
「Youth Network for Peace」(YNP)代表 中島大樹 さん

「映像などで見る記録と、直接聞く“生の声”では全然違う」――。長崎大学大学院で核軍縮・不拡散を学ぶ中島大樹さん(22)は、被爆者本人が語る体験は影響力が大きいと感じています。

大阪生まれ、福岡育ちの中島さん。最初から核問題に興味があったわけではありません。長崎大学に進学し、国際協力に関心があったことが縁で、核軍縮・不拡散問題に関する教育プロジェクトに参加。同活動を通して「被爆者が少なくなる時代を見据えた時、自分たちのように直接、体験を聞いた側が行動を起こすべきだ」と強く思うようになりました。

このプロジェクトでは、核軍縮に関する国際会議にも出席。進展しない議論を目の当たりにし、市民の地道な取り組みが重要だと実感しました。また、活動に携わる人々の“横のつながり”が薄いことも分かったそうです。こうした「気付き」をきっかけに、昨年、被爆地以外で活動する学生らとも協力してYNPを設立。若者の視点から、核問題などをテーマに語り合うイベントを開催しました。

コロナ禍で軍縮などの国際会議が相次ぎ中止となり、「核廃絶への意識が薄れるのでは」と懸念する中島さんは、オンラインを駆使して機運の醸成に挑みます。「(核問題などを)多くの人に届けるチャンス。どこまで発信できるか」。逆境をバネに、新たな発想で継承への闘いを続けます。

平和継承“自らの言葉”で
長崎大学核兵器廃絶研究センター 中村桂子 准教授

核問題は「どこか遠い世界の話」と感じている若い世代が、少なくありません。長崎でも決して例外ではなく、深刻な課題と言えます。

長崎大学では2013年以降、県、長崎市と三者で連携し、県内学生を対象とした核廃絶などに関する教育事業に力を注いでいます。

今後、被爆者団体の高齢化や規模の縮小化が避けられない中で、被爆者の心や核廃絶への道を、自らの考えや言葉をもって語り、行動する人材の育成が重要になると考えています。そもそも核問題は環境問題などと同じように、地球規模の、深刻かつ身近な危機です。若者だけではなく、あらゆる世代が“当事者意識”を持って議論し、行動していくことが解決への後押しとなります。

一人の地道な行動から未来を変えていけるとの信条で、未来を担う若い世代のあらゆる挑戦を、一層支えていける社会であってほしいと願います。政治には、そのための力強いバックアップを期待したいです。

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