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【主張】原爆投下75年 被爆者の思い共有し核廃絶を
きょう6日、人類史上初の原子爆弾が広島市に投下された。その3日後に、再び原爆が長崎市に落とされた。
立ち上る巨大なキノコ雲の下で、広島市で14万人、長崎市で7万4000人もの人が一瞬のうちに命を落としたと推計されている。たとえ生き残っても、放射能汚染の後遺症に悩まされ続ける。
この惨劇から今年でちょうど75年。核兵器のない世界を何としても実現するため、唯一の戦争被爆国である日本が、国際社会をリードしていくとの決意を強めたい。
「地獄とは被爆者が体験したような場所だと思う。二度と起こしてはいけない」
3日の英BBC放送(電子版)が紹介した、被爆者の上野照子さんの言葉だ。上野さんは広島市への原爆投下当時、爆心地から約1.6キロの広島赤十字病院にあった救護看護婦養成所の2年生だった。養成所の寄宿舎は倒壊し、同級生が目の前で焼け死んだり、圧迫死したりした。
忘れてはならないのは、広島と長崎の被爆者が、自身が体験した同じ“地獄”を将来の人たちに味わわせてはならないと、壮絶な被爆体験を語りながら、核廃絶を世界に求め続けてきたということだ。
2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約(核禁条約)は、核兵器に「絶対悪」の烙印を押し、その使用や開発などを幅広く禁止した。核禁条約は、前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記している通り、被爆者の訴えに共感する国が数多く存在するからこそ誕生した。この共感の輪をさらに広げる必要がある。
残念ながら、米国やロシア、中国などの核兵器保有国は、より使いやすい爆発力を抑えた低出力核弾頭や、その運搬手段となる新たなミサイル開発に力を入れている。
また、北朝鮮は核抑止力を増強する姿勢を強めている。中東に目を向けると、核兵器開発疑惑が持たれているイランやイスラエルに加え、トルコやサウジアラビアも開発に着手するのではないかとの懸念さえ出始めている。
核兵器保有国と非保有国が核廃絶という目的を共有し、その実現に向けて歩み出せるような環境を、日本がつくり出していきたい。