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コラム「北斗七星」
大相撲7月場所で、再入幕したての元大関・照ノ富士が優勝を飾った。3年前に大関から陥落。けがと病気に苦しみ、一時は序二段まで番付を下げた。何度も相撲を辞めようと考えたが、そのたびに師匠の伊勢ケ浜親方らに励まされたという◆優勝インタビューでは「落ちているときも応援してくれた方々に、恩返しをしなければいけないと思って」と、感謝の思いが活躍の原動力となったことを話していた◆相撲界には、記憶に残る数々の復活劇がある。テレビ解説でおなじみの尾車親方(元・琴風)も現役時代、膝の故障で関脇から幕下まで陥落、そこから這い上がり大関まで昇進した。そして引退後も、相撲協会巡業部長の仕事中に転倒して大けが。一時は全身まひに見舞われながらも、奇跡の回復を遂げた◆5年前に本紙の新年号対談で「何が何でも部屋に帰る! と自身を奮い起こしてリハビリに励みました」と当時を振り返っている。そして「妻や家族をはじめ、多くの人の支え」に心からの感謝も語った◆普通なら絶望的な状況から立ち上がり、復帰するには、順調な時より何倍もの努力が必要かもしれない。だからこそ復活のドラマは多くのファンの胸を打つ。立て続けの災害やコロナ禍に立ち向かおうとしている私たちも、勇気を得られた思いがする。(千)