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【主張】障がい者のホーム転落 コロナ禍でも声掛けで防ぎたい
痛ましい事故が起きないよう対策を進める必要がある。
東京都杉並区のJR阿佐ケ谷駅で先月26日、視覚障がい者の男性がホームから転落して亡くなった。
自力ではい上がろうとしたところに電車が進入したというのだから、わずかな時間に起きたのであろう。列車の急ブレーキや周囲の手助けが間に合わなかったのが残念でならない。
国土交通省によると、駅のホームからの転落事故は2018年度に全国で2789件起きている。このうち視覚障がい者の転落事故は63件で、3人が列車にはねられ死亡したという。
転落事故を防ぐ最も有効な方法は、ホームドアの設置である。
国交省は現在、1日平均10万人以上が利用する駅からホームドアの導入を順次進めており、今年3月末までに、全国約9500駅のうち大都市圏を中心に855駅に整備されている。ただ、1日の平均利用者が約4万5000人の阿佐ケ谷駅をはじめ、都市部でも未整備の駅が多いのが現状だ。
事故後に阿佐ケ谷駅を視察した公明党国交部会長の岡本三成衆院議員は「障がい者や高齢者、子どもの目線に立った安全対策を強化していく」と述べた。まずはホームドアの整備を急ぐとともに、駅の安全監視体制を改めて確認したい。
また、ホームドアは費用や工期の点で鉄道事業者の負担が大きい。JR東日本が取り組んでいるコスト削減や工期短縮が可能な「スマートホームドア」の導入など、新技術の開発・普及を国としても後押しすべきであろう。
視覚障がい者に声を掛けることも重要だ。
阿佐ケ谷駅での事故などを踏まえ、都盲人協会は29日、都営地下鉄の駅ホーム上で、乗客から視覚障がい者への声掛けを呼び掛けてほしいと都に要望した。コロナ禍により、声を掛けてくれる人が減っていることを強く懸念しているためだ。
視覚障がい者にとって駅のホームは“欄干のない橋”に例えられる。どれほどの不安を感じながら利用しているかに思いを寄せ、転落防止に手を貸したい。