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生活再建見通し立たず
生活再建 見通し立たず
住宅確保、事業者支援が急務
熊本県を中心に九州を襲った豪雨災害から、きょうで3週間。甚大な被害を受けた熊本、大分、福岡の3県の被災者の姿を紹介する。=九州支局
九州豪雨3週間
球磨川が氾濫し、流木などが散乱する坂本町=18日 熊本・八代市
「こんなにひどい災害は経験したことがない」。熊本県八代市坂本町に住む山下政勝さん(70)、ちづるさん(60)夫妻は、こう声をそろえる。
豪雨により氾濫した1級河川・球磨川沿いに位置する同町では、大規模な浸水や土砂崩れが発生した。4日早朝、山下さん夫妻は公民館に避難。今は、市総合体育館に身を寄せる。
木造平屋建ての自宅は、天井や壁が壊れ、家財道具など全てが泥まみれに。政勝さんにとっては生まれ育った家だけに「ショックで言葉が出なかった」と語る。
県によると、住宅被害は、全半壊が700棟を超え、床上・床下浸水は約8000棟に上った。現在、10市町村の避難所に2011人が避難している。
今後の住まいについて、先の見通しが立っていない山下さん夫妻。避難所生活が続く中、「一日も早く日常の生活を取り戻したい」との思いは募るばかりだ。
「店をたたんだ方が楽だ。でもそういう訳にはいかない」と語るのは、大分県日田市にある天ケ瀬温泉街で「お食事処 合楽」を営む於久達雄さん(63)。1級河川・玖珠川が氾濫し、温泉街にある17軒の旅館のうち11軒が床上浸水。合楽も濁流にのみ込まれた。
コロナ禍の影響で3月以降の売り上げがほぼゼロの中、追い打ちを掛けるように襲ってきた今回の豪雨。それでも、「負けてはつまらん」。於久さんは、変わり果てた店を見つめながら、再起を誓う。
福岡県久留米市では、大雨により側溝や用水路などから水があふれ出す内水氾濫や、河川の越水が発生し、農業・畜産にも多大な被害が生じた。酪農家の中園尚寿さん(52)は「浸水した牛舎を見た時は、心が折れそうになった」と語る。
現在、水害のストレスから体調不良が目立つ乳牛のケアに余念がない中園さん。「応援してくれた人たちに感謝し、牧場を立て直していく」と意気込む。
今回の豪雨で市内の農業関係の被害額は11億8360万円を超える見込みだ。被災者の生活再建に向けた支援策の早期実施へ、国と自治体の協議が急がれる。