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【主張】自治体の防災力 広域連携で専門家派遣の促進を
近年の風水害の激しさは「気候の凶暴化」とも表現され、今年も既に豪雨に襲われた。昨年は台風が猛威を振るったが、その台風シーズンも間近である。
災害対策は国と自治体の重要テーマだが、災害の最前線で奮闘する自治体にとっては、「気候の凶暴化」とともに深刻な問題がある。それは土木建築分野の技術職員(専門家)の確保だ。
先月の第32次地方制度調査会答申、そして先週閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)でも、専門家育成による地域防災力の向上が盛り込まれた。しかし、少子高齢化と人口減少が進む今、防災・減災の最前線を担う人材群の確保は容易ではない。
自治体を支える地方公務員の数は、1994年の約328万人をピークに減少し、2019年は約274万人になった。特に、教育、土木、農林水産、衛生の専門家が減っている。
災害が相次ぐ現在、土木建築の専門家育成を急ぐだけでは間に合わない。自治体間の広域連携による専門家の派遣、活用体制をさらに整える必要がある。
政府の「自治体戦略2040構想研究会」第2次報告(18年)によると、全国約1700の市区町村のうち、災害時の相互応援協定を結んでいる自治体は約98%で、さらに、都道府県外の自治体と協定を結んでいる自治体も約72%に上る。
こうした協力関係を基礎にして、政府は、災害発生時に自治体が中長期に派遣できる専門家を確保することができるように財政措置を本年度から講じた。先の調査会答申も「大規模災害時の中長期派遣要員の確保・派遣調整を広域的な視点で行う必要がある」と強調した。この制度を積極的に活用するため、その基盤となる市区町村間の広域連携をさらに進めてほしい。
同時に自治体は、「構想研究会」が指摘したように、人口減少に備え「従来の半分の職員」で機能する役所づくりを進めなければならない。
被災地で住民に寄り添い、生命・財産を守るのは基礎的自治体の市区町村だ。強力な支援体制の構築が政府には求められる。