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コラム「北斗七星」
天候不順で飢饉に見舞われた上に、疫病が流行し人が倒れ伏している――。鴨長明は平安末期の養和年間(1181年~82年)を、「憂へ悲しむ声、耳に満てり」と、『方丈記』(ちくま学芸文庫)に記した◆飢饉と疫病はセットなのか。大量発生したサバクトビバッタが世界各地の農作物を食い荒らしているのだ。国連世界食糧計画はコロナ禍が加わり飢餓人口は倍増すると推計。「温暖化でバッタの繁殖期間が長くなり、過去にない大被害につながる」とみる専門官も◆小欄で「蝗害」に警鐘を鳴らしたのは2月。一つの群れで1日3万5000人分の食糧を食べ尽くす。当時は1000億匹だったが、今は数兆匹に。中東、アフリカから南アジアに拡大し、パキスタンでは被害が5500億円にも達すると聞く◆とにかく、たちが悪い。「群生相」と呼ばれ、距離を保って育つとおとなしいが、密集して発育すると獰猛に。トノサマバッタも同様で、1880年から数年間、北海道を中心に甚大な被害をもたらした◆今回はコロナ禍で技術者と殺虫剤の移動が制限されたのが響いたとか。感染症と蝗害の複合災害。「歩くときに前に進めるのは、床の抵抗があってこそです」(岡崎武志著『明日咲く言葉の種をまこう』所収/春陽堂書店)というが、前進は並大抵ではない。国際社会の結束が急務だ。(田)