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コラム「北斗七星」
手元に、覚醒剤を使用していた息子について綴られた母親の手記がある。「(世間の目から逃れるため)町を出てから、私と一緒にいられたのは、8日間でした。クスリが切れ始めたら、狂って、狂って…」。家族が抱える深刻な現状が伝わってくる◆きょう26日は、「国際薬物乱用・不正取引防止デー」。薬物依存症は国際的に認められている精神障がいの一つ。“ちょっとくらい”という軽い気持ちで覚醒剤や大麻などの薬物に手を出すうちに、心身に異変が生じ自分ではコントロールできなくなる。多くの場合、幻覚や妄想などの症状が現れる◆2019(令和元)年のわが国の薬物情勢をみると、覚醒剤事犯の検挙人員は減少傾向にあるが、覚醒剤の押収量は初めて2トンを超えた。また若年層を中心に大麻の乱用が拡大し、大麻事犯の検挙人員は初めて4000人超に◆しかし薬物依存症は、時間はかかるが回復可能だ。精神科医で治療に詳しい松本俊彦氏によると「依存症からの回復には、人とつながり、そのつながりに依存できるようになることが大切」(『薬物依存症』、筑摩書房)と◆大麻の乱用など深刻な問題となっている青少年に焦点を当てた広報・啓発や、徹底した水際対策の実施、薬物乱用者に対する適切な治療と効果的な社会復帰支援の強化が望まれる。(照)