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コラム「北斗七星」
「毎朝、公明新聞の連載小説が楽しみ」という読者からの声を多くいただく。いま連載中の澤田瞳子さんの『月ぞ流るる』は平安時代中期を舞台にした物語だ◆平安時代というと古典の教科書を学ぶようで、親しむ機会がいまいち少なかった。だが澤田さんの小説は、登場人物が1000年の時を超え、私たちの身近にいるかと感じるほど、生き生きと描かれている。主人公の赤染衛門(朝児)と娘たちの会話など、わが家の妻と娘のやりとりでも聞こえてきそう。思わず「あるある」と笑ってしまう◆作品では、優しかった育ての母が命を奪われ、暗い怨念を燃やし続けてきた少年・頼賢が、人間として成長していく姿にも感動させられる。人のぬくもりが、孤独で荒ぶる心を和らげ、立派な大人へと育んだ◆連載は大詰めを迎え、今は病身の帝と、その帝に退位を迫る藤原道長との対立が焦点となっている。思うままに権勢を振るう道長に、帝は抗う力を失っている。しかし作者は、病身であっても多くの人から慕われ、守られる帝を「誰より幸せな男ではあるまいか」と見る◆一方、今は絶頂にあっても「満ちた月は、必ずいつか欠ける」と、権力者・道長の行く末を案じる。権勢と栄華の宮廷の中で、人間の生き方を深くとらえた物語の行方に、最後まで目が離せない。(千)









