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2020年6月11日

伝承活動の今

東日本大震災9年3カ月

東日本大震災から9年3カ月。南海トラフ巨大地震など今後の災害へ備えるための情報発信や、次世代へ記憶と教訓を継承しようと、被災地では多様な活動が続けられてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で語り部などの伝承活動は大半が休止している。苦境に立たされながらも、活動の持続性を保ち、それを担う人材を育成しようと活動する岩手、宮城両県での取り組みと課題を追った。=東日本大震災取材班

岩手・釜石市
オンラインで語り部
いのちをつなぐ未来館

防災教育を重ね、3.11の大津波では学校にいた全小中学生が避難し、無事だった岩手県釜石市。鵜住居地区の津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の職員で語り部を務める菊池のどかさん(24)もその一人だ。「震災を知らない世代が増える中、出来事を知ってもらうことで未来の命を救いたい」と願い、自らの体験を語る。

昨年3月にオープンした同館はこれまで、全国の学校や企業などの防災学習も含め、計6万7000人以上が訪れた。だが、コロナの影響で今年4月下旬に臨時休館。今月1日から営業再開したものの、防災学習や修学旅行、研修を予定していた10以上の団体がキャンセルし、来館者数の回復のめどは立っていない。

県を越えた移動に慎重さが求められている中、同館はインターネットを活用した伝承活動を始めた。館内の展示物を紹介する「オンラインガイド」と、実体験を語る「オンライン語り部」の二つのプログラムを用意し、児童生徒が率先して避難行動した「釜石の出来事」などを解説している。

防災教育、遠隔地で

オンラインによるプログラムには、県内内陸部の学校から「防災学習で使いたい」との問い合わせも。将来的には遠隔地での伝承活動へ発展させることも視野に入れ、「被災地への関心を高める機会とし、現地を訪れるきっかけにしてもらえたら」と語る。

菊池さんは「今後、感染症対策も含めた避難のあり方など正確な情報を伝えられるガイドを心掛けたい」と決意している。

宮城・石巻市
住民主体で風化防ぐ
3.11みらいサポート

「がんばろう!石巻」の看板前で中川専務理事(中央)から話を聴く党宮城県議団のメンバー

コロナ禍は、伝承活動を続ける上での資金面にも影を落とす。岩手、宮城、福島の3県を中心に大震災の伝承活動に取り組む民間団体の広域連携組織「3.11メモリアルネットワーク」が実施した緊急アンケートによると、昨年の3月から5月に震災学習プログラムへ参加した人が2万6899人だったのに対し、今年の同時期では1791人へ激減(今月10日現在)。「資金難で活動の存続が難しい」など、厳しい現状が浮き彫りになっている。

こうした危機感から、宮城県石巻市の公益社団法人「3.11みらいサポート」は今年5月、独自の助成事業を立ち上げた。個人や企業の寄付による「3.11メモリアルネットワーク基金」を活用し、伝承活動の担い手を支え、企画力向上をサポートするのが狙い。

同法人の中川政治専務理事は「善意のボランティアに頼るだけでは伝承活動が途切れてしまう。民間の活動が継続できるよう行政の下支えが不可欠だ」と強調する。

公明、現地で窮状聴く

公明党宮城県議団の庄子賢一、伊藤和博、横山昇、遠藤伸幸の各議員は3日、同市で中川専務理事と意見交換。

中川専務理事は、「がんばろう!石巻」の看板前を訪れる人が年々、増加傾向にあることを紹介。「象徴的な看板に加え、市民による伝承活動が活発に行われていることで県内外の人々の関心を高め、来訪が続いている」と述べた。

庄子県議らは「コロナ収束後、修学旅行の復活など観光促進、防災教育の観点からも地方と国の党のネットワークを生かし、住民主体の伝承活動の支援に取り組みたい」と応じていた。

取材後記

「リピーターが訪れる場となったり、住民との交流が深まるきっかけは『話し手』の印象が大きい」。中川専務理事は、伝承活動を担う“人”の重要性をこう強調する。

震災10年を前に被災地では、国や県などによる伝承施設や復興祈念公園の整備が着実に進む。一方で、それを担う語り部の人材育成や確保といったソフト面の多くは、民間団体の主体的な活動によって支えられており、今回のコロナ禍で資金面の課題があらわになった。3.11の記憶と教訓を次代へと確かに伝えていくには「住民主体の『伝承』『復興』『防災』」へ、さらなる公的支援が求められる。

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