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低体重児向け母子手帳
全国初 親団体と共同制作
静岡県
ポコアポコ交流会で母親らと懇談する(右から)盛月、早川、高田の各県議
早産などにより2500グラム未満で生まれた子を低出生体重児という。厚生労働省によると、2016年に生まれた低出生体重児は9万2082人。全体の1割近くに上る。不安の中で育児を始める母親らを励まそうと、静岡県は、低出生体重児向けの母子手帳「しずおかリトルベビーハンドブック」(以下、ブック)を作成し、県内外に反響を呼んでいる。
ブック(A6判、64ページ)は、静岡県と、県立こども病院で生まれた低出生体重児の親でつくる団体「ポコアポコ」(小林さとみ代表)などが今年3月に共同制作した。自治体と市民団体が母子手帳を共同で作るのは全国で初めてだ。
配布対象は子どもの出生体重が1500グラム未満、もしくは低出生体重児で支援が必要な場合。出生直後から3歳くらいまでの成長を記録できる。県は出産前後の母子に専門的な医療を行う周産期母子医療センター(県内13カ所)でブックを配布。電子版も用意し、だれでも印刷できるようにした。
発育や表情 小さな成長 細かく記録
妊娠時に配布される一般的な「母子健康手帳」は、国が定めた様式に基づき市町村が作成。妊娠期から幼児期までの健康・成長を記録する大切なツールだが、低出生体重児が誕生した場合、手帳に記載されている平均的な身長・体重などよりも成長が遅れるため、親は子の成長を実感できず、不安で落ち込んでしまうケースが少なくない。
これに対し、ブックは、1500グラム未満の極低出生体重児の発育曲線を掲載するなど、きめ細かな配慮と工夫を行き届かせている。親や医療機関など関係者の意見を広く反映させた成果だ。
また、発達を記録する「赤ちゃんの成長・発達を『みーつけた!』」(合計10ページ)には、「頭を一瞬持ち上げる」などの反応や動作を46項目列挙。その動きを実際に確認した日を記入できるようになっている。最初の項目は「しかめ顔などの表情をする(表情が豊かなしるしです。次は必ず笑いますよ)」。各項目に動作の意味や次のステップへの励ましが書いてある。
一方、初めて赤ちゃんに触れた日や声を聞いた日など、たった一度の「初めて」記念日を記録できるページを設けた。各ページの下部には先輩ママからの応援メッセージもあり、全ページが“母親目線”で編集されている。
不安解消「心の支えに」
公明党静岡県議団は議会質問で低出生体重児のための母子手帳の発行・普及を取り上げて推進してきた。このほど早川育子、高田好浩、盛月寿美の各議員が「ポコアポコ」の交流会に参加し、母親らと懇談した。
689グラムで生まれた石黒太凰君の母・あゆみさんは「このハンドブックを使って『やっとお母さんになれた』と感じた。心の支えになりました」と喜びを語った。小林代表は「県が配布することで、配布漏れを防ぐことができる。小さな子を生んだ全国の母親全員に届くことが願い」と語っていた。
全国への広がりを期待
国際母子手帳委員会 板東あけみ事務局長
静岡の取り組みで特に優れている点は、当事者目線が生かされていること。出産直後の親が一番つらい時に心強い冊子をもらえることも大きいです。不安による虐待や育児放棄を防ぐ効果もあります。各都道府県の病院にもNICU(新生児集中治療室)を卒業した子の「親の会」があると思います。行政と親の会が連携し、こうした取り組みが県や政令市で実現することが私の夢です。早急に全国に広がることを期待しています。