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困窮学生らをアルバイトで支援
自治体
新型コロナウイルス感染拡大の影響でアルバイト先が休業し、学業や生活の糧を失った学生が少なくない。緊急事態宣言が全面的に解除された現在も、当面は正社員のみで営業を再開するところも見受けられる。こうした中で公明党も推進し、一部の自治体では困窮学生らをアルバイトとして採用する取り組みも始まっている。事例を紹介する。
東京都
非常勤職に600人超採用
コロナ対応事務や教員補佐で
5月27日、東京都庁(新宿区)の一室では、非常勤職員として働く24人の大学生らが、大量に届いた封筒内の書類の仕分け・整理に没頭していた。この作業は、休業要請に応じた中小企業などに対して都が実施する「感染拡大防止協力金」の支給業務の一環だ。
三本木綾香さん(20)は、都内の大学3年生。「バイト先が4月から休業し、収入が半分に。まだ復帰の連絡がない」。就職活動の準備に不安を抱えていたところ、都の募集を知ったという。「公務員志望なので予備校に通うお金が必要。この仕事で少し賄える」とほっとした表情を見せた。
都は5月12日から、コロナ禍で困窮する学生を対象に非常勤職員の募集を開始した。任期は最長で5月中旬から今月末までの1カ月半で、時給は1050円。現在、600人超が採用され、協力金の支給業務や、都立学校の教員補佐などの仕事に従事している。
都人事部制度企画課の野田敏課長は、「採用された学生の中には4月に上京したばかりでバイト先が見付からず、親元にも頼れない学生もいる」と語る。一方で行政側も新型コロナへの対応で急な人手を必要としており、双方とも助かる状況のようだ。
神戸市
中3生対象 学習支援で講師役
神戸市は今月8日から30日まで、家庭教師派遣などを展開する株式会社トライグループと提携し、市内の生活困窮世帯の中学3年生を対象に、オンライン上での無料の学習支援を始める。講師に大学生らを採用することで、アルバイト収入が減った学生への支援も兼ねている。
同市が先月下旬、兵庫県と大阪府に住む学生を対象に講師を募集したところ、50人の枠に対して260人の応募があった。
生徒は週1回、30分の枠内で、問題の解き方や勉強の悩みなどを学生講師にマンツーマンで相談できる。同市は、約200人の中3生の受講を見込み、今月7日まで募集を行う。
青森・弘前市
賃金を半額助成
日本一のリンゴ生産量を誇る青森県弘前市では、4月から新たに臨時作業員を雇用した農業者らに、1日当たりの賃金の半分(上限3000円)を補助している。新型コロナの影響で休職・休業中の市民や大学生らの働き口を確保するとともに、慢性的な人手不足にある農家とマッチングさせることが狙いだ。
補助金の交付対象期間は11月30日まで。事業の後押しを受け、201人が就労中または就労を見込んでいる(2日現在)。農園でアルバイトをした学生からは「新学期の教材費が確保できた」との声が上がるなど好評だ。
公明、若者の声聴き「給付金」実現
全国大学生活協同組合連合会が5月1日に発表した緊急アンケートの結果では、約4割の学生がアルバイト収入が減少する見通しと答えた。同会の担当者は「6月中は雇用状況が戻らないのではないか」との懸念を示す。
公明党青年委員会はオンラインでの「ユーストークミーティング」を開催する中で、コロナ禍での学生の声を聴いてきた。4月25日から5月10日の間だけでも約450人の若者と対話を重ねている。
寄せられた声が形となり、今年度第1次補正予算の予備費を活用し、新型コロナの影響で困窮する学生を支援する「学生支援緊急給付金」が実現した。①家庭から自立してアルバイト収入で学業を賄っている②アルバイト収入が50%以上減少③住民税非課税世帯で高等教育無償化を受給、または無利子の貸与型奨学金を限度額まで利用している――などを要件に、1人当たり10万円または20万円を支給する。
同第2次補正予算案では自治体向けの「地方創生臨時交付金」が増額され、1次補正と合わせて3兆円を確保した。1次補正の交付金を活用し、北海道江別市は学生アルバイトを新たに雇用した事業者への給付金支給を実施。各地でも交付金を財源にした学生支援策が検討されている。