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2020年5月29日

若手研究者 コロナ禍で苦境

困窮学生への給付金「心強い」

およそ1カ月半続いた新型コロナウイルスの緊急事態宣言が25日に全面解除され、教育・研究活動を自粛していた各地の大学も再開へと動き出した。だが、この間の影響をもろに受け、苦境に立たされているのが生物や化学、物理学など自然科学分野に属する若手研究者たちだ。「ポストドクター(ポスドク)」と呼ばれ、博士号取得後に大学研究室で任期付きの研究員として働くAさん、大学院の博士課程に在籍するBさん――首都圏に住む30代男性2人の事例を基に、必要な支援を探ってみた。

実験は台無し、家賃も払えず

Aさんには年頭に掲げた目標があった。研究員としての雇用契約が切れる来年3月までに2本の論文を書き上げることだ。その後はキャリアアップをめざし海外留学を視野に入れていた。今春には、論文の一つは8割方仕上がり、最後の実験を残すのみ。もう一方は3割程度で、ようやく、めどが立ったところだった。

そこに襲ってきたコロナ禍。4月7日の緊急事態宣言発令で大学構内への立ち入りが禁止された。このため、研究室で実験用に培養していた細胞などは手入れができなくなり、廃棄する羽目に。Aさんは「実験は台無し。準備からやり直さないといけない。3カ月以上は時間を取られる」と肩を落とす。

一方、Bさんは経済面で窮地に陥った。昨年度までは、日本学生支援機構から貸与される無利子奨学金月額12万2000円と、指導教授の下で研究補助などを行う「リサーチアシスタント(RA)」の給与同7万円を生活費に充てていた。

今年度からは、博士課程の在籍年数が4年目に入り、標準修業年限3年を超えたため無利子奨学金を貸与されなくなった分を、アルバイト代と親からの仕送りで賄うつもりだった。ところが状況が一変し、仕送りは見込めなくなり、アルバイトとして考えていた学習塾や家庭教師は、できずじまいとなった。

秋には博士論文の予備審査を控え実験の遅れが気掛かりだが、「今月分の家賃をどうしようか、目先のことで頭がいっぱいだ」。

経済的に困窮する学生に1人10万円の現金給付を求める公明党の斉藤鉄夫幹事長(中央左)と浮島智子文部科学部会長(左隣)。萩生田光一文科相(中央右)は「早急に対応したい」と応じた=8日 文科省

生物学、生命科学に携わる研究者約9万人が所属する「生物科学学会連合」は、今月8日に緊急声明を出した。前述のAさん、Bさんのように、各地で苦しむ若手研究者の声を集約し、関係各所への要望を3点にまとめたものだ。

具体的には、①国や大学、日本学生支援機構などに授業料の減免および生活支援の拡充②日本学術振興会をはじめとする研究支援団体に、若手研究者が財政支援を受ける条件として取り組んでいる研究が遅れることなどへの配慮③国や大学などに学生の卒業・修了に関する柔軟な対応――を求めている。

こうした当事者の動きに呼応して公明党も、政府に学生支援の強化を繰り返し要請してきた。その結果、実現した施策の一つが、19日に創設された「学生支援緊急給付金」だ。今年度第1次補正予算の予備費から約530億円を充て、困窮する学生に対し、1人当たり10万円または20万円を支給する。

同給付金について、生物科学学会連合の代表を務める小林武彦・東京大学教授は「心強い。救われる大学院生も多いはず」と話す。Bさんも大学での受付開始を心待ちにしている。

博士号取得者少なく 日本は危機的状況

主要国の博士号取得者数(人口100万人当たり)の推移

日本の研究力の低下が指摘される中、コロナ禍が追い打ちをかける事態は、絶対に食い止めなければならない。

既に日本の研究力は「危機的状況にある」と言われ、これを裏付けるように博士号取得者の数が少ない。人口100万人当たりで見ると、日本は16年度で118人にとどまるが、韓国は、その2倍を超える271人、英国、ドイツはそれぞれ3倍を超える360人、356人となっている。

このため、日本を代表する科学者組織「日本学術会議」は昨年10月、日本の科学技術政策の基本となる「第6期科学技術基本計画」(21~25年度)に向けた提言の筆頭に「日本の研究力復興のための最優先課題は、欧米並みの博士課程学生への経済的支援」と明記した。

今年1月の参院本会議で代表質問に立った公明党の山口那津男代表も、「若手研究者への支援は喫緊の課題」と述べ、彼らが腰を据えて研究に専念できる環境整備を急ぐべきと訴えている。

「このままでは若手研究者の希望が打ち砕かれてしまう」。小林教授はそう語り、国からの手厚い支援を望んでいた。

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